週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、対ドルを中心に下値限定か

◆ポンド、金融引き締めペースの差を意識、対ドルを中心に下値は限定か
◆ポンド、長期債の売却が順調に進まないと波乱要因
◆加ドル、産油国通貨としての面が意識されそう

予想レンジ
ポンド円 164.00-171.00円
加ドル円 101.50-106.50円

11月28日週の展望
 ポンドは「英米の金融引き締めペースに差がつく」との思惑から、対ドルを中心に下値は限定されそうだ。英国では足もとのインフレ率が11%超まで加速するなか、イングランド銀行(英中銀、BOE)のチーフエコノミストでもあるピル金融政策委員会(MPC)委員が「一段の追加利上げが必要」との見解を示した。先週伝わった一部MPC委員からのハト派意見を打ち消す形だ。一方で、物価上昇に鈍化の兆しが見える米国では、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で「近くに利上げペース減速が適切になる」という考えの委員が多いことが分かった。BOEも引き締めの「更なる強化」には慎重ではあるものの、そのペースを弱めるような国内状況ではない。米金利先安観がこのまま強まることになれば、ポンドの対ドルでの底堅さがより意識されることになる。ただし、対円では米長期金利に敏感なドル円の動きも見極める必要があるだろう。

 また、スナク新政権による2027-28年度までに550億ポンドの財政再建策を盛り込んだ「中期経済計画」は、金融市場の動きを見る限り好意的に受け止められたようだ。再建計画のほぼ半分は増税頼みだが、事前に懸念されていたよりも税負担が小さいことが好感されて英国株は強含み。発表直後は売り先行(金利は上昇)の英長期債も、週をまたぎ買い優勢(金利は低下)となった。英債については英中銀が29日、トラス前政権下で市場混乱を落ち着かせるため緊急に買い入れた193億ポンド分の一部売却を開始する。順調に売却が進むようなら問題はないが、逆に需給バランスが崩れてしまうようだと為替相場にとっても波乱要因なりそうだ。

 加ドルは、原油相場が乱高下するなか、産油国通貨という面が意識されそうだ。サウジアラビアは否定しているが、「石油輸出国機構(OPEC)プラスが来月会合で増産を検討」との報道についての続報に注視している。また、G7やEUがロシア産原油に導入予定の価格上限に関し、「これまでより緩めの方針が検討」とも報じられた。設定水準への思惑で相場は更に神経質になりそうだ。加えて、中国の景気減速についても警戒する必要がある。なお、加経済指標では7-9月期や月次国内総生産(GDP)や11月雇用統計が注目される。

11月21日週の回顧
ポンドは買いが先行。前週に公表された英国の中期財政計画を好感した流れが続き、11月製造業/サービス部門PMI速報値が予想を上回ったことにも後押しされた。FOMC議事要旨を受けて全般ドル売りが強まると、対ドルでは8月半ば以来の1.21ドル台まで上昇した。対円でも169円付近まで強含んだが、週後半には反落したドル円につれて上値を切り下げた。

 加ドルは米金利先安観の強まりが対ドルでは支えとはなった。乱高下しながら水準を下げた原油先物が重しとなり伸び悩む場面があったものの、週後半には1.33加ドル前半まで加ドル高に振れた。対円では105円後半で上値を抑えられ、ドル円の反落につれて103円半ばまで売られた。カナダ中銀総裁が更なる利上げが必要との見解を示したものの反応は鈍かった。(了)
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