東京為替見通し=ドル円、年初来高値を睨む位置 引き続き円買い介入の可能性は警戒か

 9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は151.39円まで上昇。米10年債利回りの上昇や、パウエルFRB議長が「さらなる引き締めが適切になれば躊躇しない」などと述べたことがドル買いに繋がった。ユーロドルも1.07ドル前半から1.0660ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒していく展開が予想される。

 昨日のドル円は、植田日銀総裁のややハト派発言とパウエルFRB議長のややタカ派発言を受けて151.39円まで上昇。先月末につけた年初来高値151.72円を睨む位置にきている。

 植田総裁は金融政策の正常化を急ぐ考えはないことを示唆。日本の現状を踏まえると、望ましい水準よりも低いインフレ率はオーバーシュートよりも対処が難しいと指摘した。一方、パウエル議長は、適切なら一段の政策引き締めを躊躇しないと言及。インフレ率を2%に下げる上で十分な引き締めを行ったと完全には確信を持てていない、との考えを改めて示した。

 本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の司令塔である神田財務官は今月1日、ドル円が151円台で推移していた時、「過度な変動にはあらゆる手段を排除せず適切な行動をとる」と発言。介入に関しては「スタンバイ」と述べた。「過度な変動」について、「一方向に一方的な動きが積み重なって、一定期間に非常に大きな動きがあった場合は、過度な変動に当たり得る」との見解を示した。すなわち、現状のドル円の151円台での動向は「過度な変動」と解釈できることになる。

 投機筋による「円キャリートレード」(低金利の円を調達し、高金利のドルで運用する取引)は、年初来で20%以上のリターンをもたらしている、と報じられている。「円キャリートレード」の残高の近似値と見なされている在日外銀の本支店勘定は、8月末時点で11兆円台となっており、2008年以来となる15年ぶりの高水準に近づいているもよう。

 日銀が世界の中央銀行の中で唯一となるマイナス政策金利を維持しているお陰で、投機筋は低金利の円を調達して、インフレ抑制のために政策金利を引き上げてきた高金利通貨(ドル、ポンド、ユーロ、豪ドル、NZドル、加ドルなど)に投資して、収益を挙げている。この円売りポジションの収益の反対側には、高止まりしている輸入物価を受けた食料やエネルギー購入を余儀なくされている日本の消費者がいるとも言える。なお、投機筋の売買を集計する米商品先物取引委員会(CFTC)の10月31日時点の、円売りポジションは103848枚(x1250万円=1兆2981億円)と数年ぶりの高水準へ接近している。



(山下)
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