東京為替見通し=ドル円は155円KOの攻防戦、豪ドルは豪インフレ率に要注目か

 23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧米株価や米長期金利の上昇を背景に154.88円まで上昇した後、米購買担当者景気指数(PMI)速報値の下振れで154.56円まで反落した。ユーロドルは、欧州時間発表の4月仏・独Pサービス部門PMI速報値が予想を大幅に上回る一方で、米PMI速報値が予想を下回ったことで1.0711ドルまで上昇した。ユーロ円は欧米株価の上昇を背景に165.74円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、155円のノックアウト・オプションへの買い仕掛けと防戦売りとの攻防戦や円安局面での本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。

 しかしながら、ドル円が155円台に乗せるのは、25-26日の日銀金融政策決定会合でのゼロ金利継続や26日発表の米3月PCEデフレーターでのインフレ再燃という材料が必要なのかもしれない。

 ドル円が1990年6月以来の高値圏まで上昇している背景には、日米の金融政策の乖離が挙げられる。すなわち、米連邦準備理事会(FRB)は量的金融引締政策(QT)を継続中であり、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ開始時期は秋以降に先送りされるとの見方が浮上し、さらに利上げの可能性もやや高まりつつある。

 ウィリアムズ米NY連銀総裁は「私の基本的な予測ではない」としながらも、「データが要求するのならば利上げする可能性もある」と述べ、アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレが高進すれば、追加利上げの可能性を示唆している。また、ジェファーソンFRB副議長は、インフレが予想通りに減速しない場合は現在の金融引き締め姿勢をより長期間維持することが適切だ、と述べている。

 FRBスタッフの推計によると、3月のPCEデフレーターは前年比+2.7%と2月の同比+2.5%から伸びが加速するとみられており、予想通りならば、ドル買いに拍車がかかることになる。

 一方で、日銀は、イールドカーブコントロール(YCC)を撤廃したものの、量的金融緩和政策(QE)は継続しており、日銀金融政策決定会合での追加利上げは夏以降になるのではないか、との見方が優勢となっている。

 明日からの日銀金融政策決定会合では、植田日銀総裁が円安による輸入物価の上昇が基調的な物価上昇率に影響を与える可能性に言及し、「無視できない大きさの影響が発生した場合には金融政策の変更もあり得る」と述べ、「円安加速の影響を議論する」との新聞報道があるものの、ゼロ金利の維持が見込まれている。注目ポイントは、関係筋が示唆したように、展望レポートでの物価見通しが上方修正される可能性となっている。

 市場が警戒しているのは、2022年9月22日の日銀金融政策決定会合の後、黒田前日銀総裁が「当面金利を引き上げるようなことはない」と述べたことで、ドル円が145円台に乗せた段階で、本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切ったことの再現である。

 26日に日銀金融政策決定会合でゼロ金利の維持が決定され、植田日銀総裁の記者会見がハト派だった場合、円安に拍車がかかる可能性が高まるが、そこで、本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切る可能性に警戒しておきたい。

 10時30分に発表される3月豪消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.4%と予想されており、1月と2月と変わらずと見込まれている。また、1-3月期豪CPIは前年同期比+3.5%と予想されており、前期の同比+4.1%からの伸び率鈍化が見込まれている。予想通りならば、インフレの鎮静化が確認されることで、豪ドルの売り要因となる。






(山下)
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