東京為替見通し=6月の日本の貿易収支と豪の雇用統計に要注目か

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、前日の植田日銀総裁の発言を受けて、日銀の大規模金融緩和策の修正観測が後退したことで139.99円と欧州時間に付けた日通し高値に面合わせした。ユーロドルは欧州序盤の高値1.1240ドルから1.1175ドルまで下落した。ユーロ円は欧州時間の高値157.21円から156.16円付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の6月の貿易赤字で実需の円売り圧力を確認し、豪ドル/ドルは6月の豪雇用統計で8月の利上げの可能性を見極めることになる。

 ドル円は、7日の内田日銀副総裁や13日の早川元日本銀行理事によるイールドカーブコントロール(YCC)の許容変動幅の拡大を示唆する発言を受けて、14日に137.25円まで下落していたものの、16日と18日に植田日銀総裁が否定的な見解を述べたことで、昨日の139.99円まで反発している。

 フォワードガイダンスを一部修正して「機動的に対応」の文言が追加されたことや、7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価見通しが引き上げられる可能性があるとの新聞報道などが、YCCの許容変動幅の拡大観測を高めていた。
 しかし、岸田政権は、今秋の衆院解散・総選挙を視野に入れており、10月上旬召集とされる秋の臨時国会前後には「防衛費増額」「子育て支援の財源問題」「24年度税制改正大綱」などが待ち受けている。YCCの許容変動幅を±0.5%から±0.75%、あるいは±1.0%に拡大した場合、岸田政権の財政政策に悪い影響を与え、株価も下がることから、植田日銀総裁は政権へ忖度したのかもしれない。
 本日も、日銀関係者によるYCCに関する発言には要警戒となる。

 8時50分に発表される日本の6月の貿易赤字(通関ベース)は、季節調整前467億円の赤字、季節調整済6632億円の赤字と予想されている。今年の1月から5月までの貿易赤字は、6兆9899億円となっており、昨年同時期の6兆5968億円を上回っている。昨年全体の貿易赤字は19兆9453億円だったが、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入(9兆1880億円)で約半分を相殺していたことになる。今年も、ドル売り・円買い介入が実施されるとすれば、実需の円売り圧力である貿易赤字額を打ち消す金額が予想される。

 10時30分に発表される豪6月雇用統計は、失業率が3.6%、新規雇用者数1.50万人と予想されている。8月の豪準備銀行(RBA)理事会での政策金利の据え置き、あるいは利上げの可能性を見極めることになる。
 7月のRBA理事会議事要旨は、インフレ、世界経済、労働市場、家計消費に関する今後のデータ、最新のスタッフ予測、リスク評価の見直しを待って、8月に状況を再評価することで合意していた。そして、失業率がインフレ押し下げに必要な水準とされる約4.5%を超えて上昇する可能性を踏まえて、経済成長が予想以上に減速するリスクもあるとしていた。


(山下)
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