東京為替見通し=ドル円、米10年債利回り低下や日銀への警戒感から伸び悩む展開か

 23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが5.0187%前後から4.82%台まで低下したことで149.56円まで下落した。ユーロドルは米10年債利回りの低下を受けて1.0678ドルまで上昇した。ユーロ円は159.78円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りの低下、来週の日銀金融政策決定会合への警戒感、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の警戒感から上値が重い展開が予想される。

 昨日のニューヨーク債券市場では、30年債利回りが約5.18%、10年債利回りも16年ぶりに5.0187%まで上昇していたが、資産家のビル・アックマン氏が米30年債のショートポジションを買い戻したとのことで、30年債は5%前後、10年債は4.8%台まで低下し、ドル売りを誘発した。

 ドル円は150円という本邦通貨当局のドル売り・円買い介入警戒水準付近での膠着状況が続いている。3日のニューヨーク市場では150.16円まで上昇したものの、大口のドル売りで147円台まで反落し、昨日のシドニー市場では150.11円まで上昇したものの、東京市場では伸び悩む展開となった。

 現時点での相場変動要因を整理して置きたい。
 まず、ドル高・円安の根幹にある日米金融政策の方向性の相違がある。
 10月31-11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、米国中長期金利の上昇が利上げの代替となるとの見立てや中東情勢の不透明感から、政策金利据え置き観測が高まっており、ドルの上昇を抑制している。
 30-31日の日銀金融政策決定会合では、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2023年度と24年度のコア消費者物価指数の前年度比上昇率の見通しが上方修正となる可能性、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の再修正の可能性が、円安を抑制している。
 7月に神田財務官が日銀の金融政策に言及した後、日銀金融政策決定会合でYCCの運用柔軟化が決定されており、今月16日に神田財務官が金融政策に言及したことで、YCCの運用柔軟化の可能性が警戒されている。

 そして、中東情勢の緊迫化を受けて、有事のドル買いへの警戒感が高まりつつある中、リスクシナリオは、第5次中東戦争と石油ショックによる円建て資産のトリプル安現象(円安・株安・債券安)となる。

 さらに、米国議会での次期下院議長の選任が難航していることは、ウクライナやイスラエルへの支援の遅れ、そして、11月17日のつなぎ予算が切れて米国政府機関の閉鎖になれば、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる米国債格下げというドル売り要因に繋がる。




(山下)
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