東京為替見通し=円売り相場継続、今週は1990年以来の円安水準を狙う展開か

 海外市場ではドル円は、152.00円手前で上値の重さを確認したこともあって、利食い売りなどが出て一時151.01円まで下落した。ただ、対ユーロ中心にドル買いが優勢になると、円に対してもドル高が進み151円半ばまで下げ渋った。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)の利下げ開始時期が近づいているとの観測を背景に、一時1.0802ドルと1日以来の安値を付けた。

 本日のドル円も堅調地合いが継続されると予想する。

 先週は日銀政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめ、英中銀(BOE)、豪準備銀行(RBA)、スイス国立銀行(SNB)等の主要中央銀行が政策金利を発表した。日銀は事前に報道機関を使い、地ならしをしたこともあり、17年ぶりの利上げもサプライズとならなかった。一方、FOMCの経済予測概要(SEP=Summary of Economic Projections)のドットプロットでは、来年以降の利下げが昨年12月時点の予測よりも緩やかになるとの見通しが示された。

 RBAは、前回声明で含みを持たせていた利上げの可能性に関する文言を削除。政策については何も決定されていないとしたが、引き締めバイアスが後退した。BOEもこれまで利上げに投票していたタカ派メンバーが据え置きに転じ、ベイリーBOE総裁はFT紙で「利下げはインプレー(in play)」と発言し、金利引き下げへの道筋が見えてきていることを示唆した。そして、SNBに至っては、主要国の中で、ウクライナ侵攻後で初めて利下げへ踏み切っている。本来ならば、日本以外の主要国が金融緩和姿勢に傾いたことで、円買い・他通貨売りに動く展開となるべきなのだろうが、円の買い戻しは非常に限られたものになっている。

 円買いにならない理由としては主に3つ。1つ目は他国の金融緩和が株買い、特に日経平均の買いを促していることで、リスク選好の動きになりやすいことが挙げられる。先週末の米株式市場は、ダウ平均こそ5日ぶりに反落したが、ナスダック総合は再び最高値を更新した。

 2つ目は、日経新聞が21日に追加利上げの3つのシナリオ(10月・7月・25年以後)を報じ、円安調整への援護射撃となる記事を掲載したが、市場参加者の多くが再利上げに動くほど日本経済が回復過程をたどるとは信じていないことだ。本日掲載の同紙でも、調査対象の77%が「物価上昇を上回る賃上げ」が実現するとは思わない、と回答している。昨年、神田財務官が「一般論として日本に魅力がなければ(円は)下がるに決まっている」と発言したように、ファンダメンタルズの弱さの円安も継続している。

 そして3つ目は、FOMCでは今年の利下げ回数の予想は前回同様に3回に留まったが、欧州やオセアニア諸国と比較し米国の利下げスピードが緩やかになる可能性があること。ドルが対欧州通貨やオセアニア通貨に対して強含み、ドル円も連れて買われやすい傾向にある。これらの複合的な要因で、ドル円も当面は堅調地合いが予想される。

 本日は日銀金融政策決定会合議事要旨が発表されるが、1月分のため相場に影響を与えることはないだろう。また、午後の1月景気動向指数改定値も動意づくとは考えづらい。市場では、2022年10月に付けた高値151.95円を超えると再び1990年以来の円安になることで、円買い介入を警戒する声がある。もっとも、日経平均が4万円台に乗せてこれまでと状況が違うことや、利上げという切り札を切った中で、為替介入だけで円安の流れを止めるのは難しいかもしれない。たとえ介入が実施され円高に動いても、絶好の円の売り場を提供することになりそうだ。

 なお、152.00円には大きめのノックアウトオプションが存在し、その水準の手前には防戦の売りがあると先週末は噂されていた。しかし、先週も欧州入り後は同水準のオプションが減少したこともあり、現時点でどの程度のオプションが存在するかは定かではない。

(松井)
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