東京為替見通し=与党補選惨敗も介入困難で円売り相場は継続か

 海外市場ではドル円は、3月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)とコアデフレーターともに予想を上回ったことで、一時158.44円と1990年5月以来約34年ぶりの高値を更新した。ユーロドルは1.0674ドルまで弱含んだ。

 本日のドル円は、引き続き買い場を探す展開になりそうだ。先週末の日銀政策決定会合後に、大幅なドル高・円安となった。週末の衆議院の3補欠選挙で与党・自民党が惨敗したこともあり、岸田政権にとっては円安による更なる支持率の急落を避けたいことで、円買い介入への警戒感は依然として高い。しかしながら、先週後半のイエレン米財務長官のインタビューでは、米国からの積極的な介入支持を期待するのは難しく、引き続き円は売られやすい地合いは変わらないか。

 25日にイエレン米財務長官は、円の価値がファンダメンタルズから外れているかとの質問に対し、コメントを避けたが、ドル高と金融引き締め政策が他国にある程度の圧力となっていると認めた。ただし、為替介入は市場が過度のボラティリティで無秩序な「非常にまれかつ例外的な状況(very rare and exceptional circumstances)」にのみ行われるべきだと述べている。先週末は3円超ドル円が上昇したことは、過度のボラティリティとも思われるが、イエレン氏に「まれかつ例外的」とくぎを刺されたことで、断続的に介入を行うのは難しく、本邦通貨当局も介入のタイミングには慎重になると思われる。

 また、これまでも東京市場が休場であるにもかかわらずアジア時間に介入を行ったことはあるが、久々に介入が行われる場合は、東京市場が参加している通常の営業日に介入を行っている。これは、休場時で東京市場参加者がいない時間での介入は、本邦勢が全くその介入により為替手当を抑えることもできないことを避けるためでもあるだろう。もっとも、為替介入を担当する各金融機関のディーラーは、円買い介入に備えて本日も臨戦態勢を整えていることで予断を許さない。

 円安が継続しているのは、これまで本邦当局者による度重なる口先介入の悪影響もある。2022年に円買い介入をして以来、同年に行われた介入の水準や、節目の150円から155円にかけて、市場は当局者の円安阻止の言葉を聞いてきた。その水準毎に本邦の個人投資家を中心にドル売り・円買いを仕掛けてきたことで、ドル円が下がった時には買い戻したい参加者が多い。また、当局者の言葉を鵜吞みにし、ドル円を買い遅れている実需勢も散見される。無責任な口先介入を繰り返したことで、本邦勢はドル円を買い遅れていることで、ドルの下落時は買い需要が高まるだろう。
 一方で、先週19日商品先物取引委員会(CFTC)が発表した円の売り越し高は、前週よりさらに増えて2007年6月26日(188077枚)以来となる179919枚となった。この円ショートポジションは1月下旬から積み上がりが増したことで、非常に持ち値が良いだろう。よって、一度の為替介入により慌てて円の買い戻しをすることもないことが、更に円高が進みにくい要因になる。

 なお、本日はアジア時間には、オセアニアやアジアからは市場を動意づけるような主だった経済指標の発表は予定されていない。また、米国からも同様に主だった経済指標の発表は予定されていないが、明日から1日まで米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれることもあり、FOMCに向けた思惑的な動きには要警戒となる。

(松井)
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