東京為替見通し=日銀金融政策決定会合が日米関税交渉に影響か、大相場の可能性も

 昨日の海外市場でドル円は、英・独株価指数が約1カ月ぶりの高値を更新するなど、欧州株相場が底堅く推移する中、欧州市場序盤に一時143.15円まで上昇した。ロンドンフィキシングに絡んだドル売りのフローが観測されると一時142.52円付近まで下押ししたが、一時780ドル超下落したダウ平均が上昇に転じ、200ドル超上昇したことも相場を下支えし 143.19円まで上値を伸ばした。ユーロドルは、一時1.1317ドルまで弱含んだ。

 本日のドル円は、日銀政策決定会合の結果発表と、第2回目となる日米関税交渉が行われる予定となっており、一日を通して大相場になる可能性がある。また、本日は中国、香港、シンガポールなどの主なアジア諸国と、独、仏などの欧州諸国が休場となることで、市場流動性がさらに低下しボラタイルな動きになりやすい。

 昨日から行われている日銀政策決定会合について、市場では金融政策などは据え置き予想となっている。植田日銀総裁は世界経済が足もとで不確実性が高まっていることで「情勢を見極め適切な政策運営に努めていく」と述べるなど、早急に金融政策の変更を行う姿勢を見せてはいない。

 予想通り据え置きになった場合でも、本日は「展望レポート」も発表し、2027年度までの経済・物価について最新の見通しを示すことで、レポート内容で市場が動意づく可能性もある。本日の日経新聞電子版には「米国の関税政策の影響をふまえ、2025年度と26年度の実質国内総生産(GDP)の前年度比成長率を1月の見通しから下方修正する公算が大きい」と記載されている。更に、「25年度のCPI(除く生鮮食品)の上昇率も2%程度に下方修正する可能性」と報じている。報道の通りの内容になった場合は、次の利上げ観測時期が後退し、円安が進むかもしれない。ただ、警戒しなくてはならないのは、レポート発表後に日米関税交渉が控えていることだ。

 28日にベッセント米財務長官は「欧州中央銀行(ECB)は、ユーロを下落させるために利下げを行うだろう」と発言している。ECBをはじめG7各国で金融政策を通貨政策に結び付けようとしている国はないと思われているが、トランプ政権は米国以外の国の低金利政策は自国通貨安・ドル高誘導に結び付けている。低金利政策を継続している日銀についても同様の考えで、レポートが低金利を維持する内容で、ドル高・円安が関税交渉前に進んだ場合は、米政権が日本(日銀)の対応に苦言を呈し、為替についても言及する可能性が高まるか。

 日米関税交渉は日本時間2日未明から行うとされているが、過度の進展を期待するのは難しい。先週から米国のトリプル安(株安・債券安・米ドル安)への対応として、トランプ政権が関税に対して柔軟な姿勢を見せ始めている。日本は7月までに参議院選挙が予定されている中で、自民党政権は更なる支持率低下を避けるために、関税交渉を早期に合意決定するのは得策とは思わないだろう。一部では今回の交渉を下地に、6月にカナダで開催されるG7サミットで石破首相とトランプ米大統領が合意を発表するとの予想もあるが、選挙日程を考えると先延ばしになる可能性もありそうだ。ただ、進展がない場合でも、前述のように日銀政策決定会合についての米政権の反応には注意したい。


(松井)
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