東京為替見通し=ドル円、週末の米中貿易交渉への期待感から底堅い展開か

 7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、トランプ米大統領の発言「中国を交渉のテーブルにつかせるために関税を引き下げることはない」で142.91円付近まで下押しした後、パウエルFRB議長の発言「金利調整を急ぐ必要がない」で144.00円まで上昇した。ユーロドルは、パウエルFRB議長が早期利下げに慎重な姿勢を示したことで1.1292ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今週末に開催される米中貿易交渉への期待感から底堅い展開が予想される。

 ドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)での予想通りの政策金利据え置きと週末の米中貿易交渉を控えて、過去9日間の中心値である日足一目均衡表・転換線の143.95円付近で推移しており、米中貿易交渉の結果待ちとなっている。

 今週末10-11日にスイスで開催予定の米中貿易交渉の米国側の代表であるベッセント米財務長官は、「今回は大きな貿易合意についてではなく、緊張緩和に関するものになるだろう。前進する前に緊張を緩和しなければならない」と述べている。
 中国側の代表は、何立峰副首相で、中国商務省報道官は「世界的な期待、中国の利益、米国の産業界と消費者の訴えを十分に考慮した上で、中国は米国と改めて関与することを決定した。もし米国の言動と行動が違ったり、あるいは協議を口実に威圧と脅迫を続けようとしたりすれば、中国は決して同意しない」と述べている。

 トランプ米大統領は、先日「中国はこれまで米国経済を搾取してきた」と主張し、昨日は「中国を交渉のテーブルにつかせるために関税を引き下げることはない」と述べており、米中貿易交渉の難航が警戒されている。

 FOMCでは、トランプ米大統領やベッセント米財務長官による利下げ圧力にも関わらず、トランプ関税の不確実性(uncertainty)を理由に、3会合連続で全員一致での政策金利の据え置きが決定された。声明では、「失業率とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断した」と関税スタグフレーションが明記され、政策担当者らは、経済成長の減速と最終的なインフレの低下を背景に、年内の50ベーシスポイント(=2回×0.25%)の利下げ見通しを依然として示した。
 パウエルFRB議長は、記者会見で「関税について大きな不確実性があり、大規模な関税が継続すれば、インフレ高進と雇用減につながる見通し」と関税スタグフレーションへの警戒感に言及し、年内2回の利下げ予測に関しては、「現時点では予測できないため6月まで待つ。トランプ大統領の利下げ要求はわれわれの仕事に全く影響しない」などと述べている。

 ミラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、FOMC声明での米国のインフレ率が再び上昇するという懸念について、トランプ政権はそのような事態にはならないと考えている、と反論している。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、利下げ開始時期は6月FOMCの据え置きの後の7月FOMCと予想されており、9月、10月の3回の利下げにより、12月時点では3.50-75%と見込まれている。

(山下)
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