週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、米中貿易交渉の行方に注意
◆豪ドル、米中貿易交渉の行方に注意
◆豪ドル、与党の単独過半数確保で豪政局は安定へ
◆ZAR、21日公表の2025年度第3次予算に注目
予想レンジ
豪ドル円 91.00-96.00円
南ア・ランド円 7.70-8.20円
5月12日週の展望
豪ドルは下値の堅い動きが予想される。豪州を巡る内外の状況は好転しつつあり、目先の豪ドル相場を下支えすることになりそうだ。なお、来週は1-3月期賃金指数や4月雇用統計の発表が予定されており、豪経済の状況を改めて確認するとともに相場の反応にも注目しておきたい。
豪州では3日に総選挙が実施され、アルバニージ首相率いる中道左派の与党・労働党が勝利。下院150議席のうち86議席を獲得し、労働党単独での過半数を確保した。事前の世論調査でも労働党の優勢は伝わっていたが、単独での過半数獲得は微妙との声もあったため、市場が懸念していた「ハング・パーラメント」を避けられたことが好感されている。
また、国外情勢でも豪ドルをサポートする内容が目立った。今週7日には週末10・11日にスイスで米中の閣僚級会議が開催され、貿易問題について議論されることが明らかになった。また、7日には中国準備銀行(中央銀行)が政策金利や預金準備率の引き下げなど金融緩和策を発表。市場では米中貿易摩擦の緩和期待が高まっているほか、中銀の金融緩和措置によって中国景気の下押し懸念も和らいでおり、中国が最大の貿易相手国である豪州経済にもプラスに働くとの思惑が広がっている。
もっとも、米中貿易協議の行方については先行き不透明感も根強い。トランプ米政権としては中国側からの譲歩を引き出したいところだが、中国政府は貿易協議の開催が明らかになった後も「貿易を巡る会談は米国側の要請で行われる」「米国との協議では自国の利益を守る方針」と強硬な姿勢を示している。面子を守りたい両国の協議で妥協案などが提示されなければ、現在の市場がリスクオンムードへと傾いているだけに失望が広がることも考えられる。交渉決裂には至らないとしても、週明けから為替相場が急変動するリスクがあることは留意しておきたい。
南アフリカ・ランド(ZAR)は国内情勢や米関税政策の行方などをにらんだ動きとなりそうだ。南ア国内では付加価値税(VAT)引き上げ撤回によって、国民統一政府(GNU)から民主同盟(DA)の脱退は回避されたが、依然として対立の火種はくすぶっており、前週末には「100人以上の国会議員がGNUに対してDAを排除するように要求した」との報道も伝わっている。また、VAT引き上げの撤回によって生じる750億ZARの歳入不足についても懸念材料。南アフリカ財務省は21日に2025年度の第3次予算を提出する予定となっているが、内容次第では南ア経済およびZAR相場の重しとして意識される可能性もありそうだ。
5月5日週の回顧
豪ドルは対円で横ばい。対ドルでは買い先行となっていたが、米連邦準備理事会(FRB)が改めて早期の利下げに慎重な姿勢を示すとやや売りに押された。ZARは対ドル・対円でともに底堅く推移。国営電力会社であるエスコムが「今年の冬(今後4カ月)は停電を回避できる見込み」との見解を示したことを好感した買いが入った。(了)
(執筆:5月9日、9:00)
◆豪ドル、与党の単独過半数確保で豪政局は安定へ
◆ZAR、21日公表の2025年度第3次予算に注目
予想レンジ
豪ドル円 91.00-96.00円
南ア・ランド円 7.70-8.20円
5月12日週の展望
豪ドルは下値の堅い動きが予想される。豪州を巡る内外の状況は好転しつつあり、目先の豪ドル相場を下支えすることになりそうだ。なお、来週は1-3月期賃金指数や4月雇用統計の発表が予定されており、豪経済の状況を改めて確認するとともに相場の反応にも注目しておきたい。
豪州では3日に総選挙が実施され、アルバニージ首相率いる中道左派の与党・労働党が勝利。下院150議席のうち86議席を獲得し、労働党単独での過半数を確保した。事前の世論調査でも労働党の優勢は伝わっていたが、単独での過半数獲得は微妙との声もあったため、市場が懸念していた「ハング・パーラメント」を避けられたことが好感されている。
また、国外情勢でも豪ドルをサポートする内容が目立った。今週7日には週末10・11日にスイスで米中の閣僚級会議が開催され、貿易問題について議論されることが明らかになった。また、7日には中国準備銀行(中央銀行)が政策金利や預金準備率の引き下げなど金融緩和策を発表。市場では米中貿易摩擦の緩和期待が高まっているほか、中銀の金融緩和措置によって中国景気の下押し懸念も和らいでおり、中国が最大の貿易相手国である豪州経済にもプラスに働くとの思惑が広がっている。
もっとも、米中貿易協議の行方については先行き不透明感も根強い。トランプ米政権としては中国側からの譲歩を引き出したいところだが、中国政府は貿易協議の開催が明らかになった後も「貿易を巡る会談は米国側の要請で行われる」「米国との協議では自国の利益を守る方針」と強硬な姿勢を示している。面子を守りたい両国の協議で妥協案などが提示されなければ、現在の市場がリスクオンムードへと傾いているだけに失望が広がることも考えられる。交渉決裂には至らないとしても、週明けから為替相場が急変動するリスクがあることは留意しておきたい。
南アフリカ・ランド(ZAR)は国内情勢や米関税政策の行方などをにらんだ動きとなりそうだ。南ア国内では付加価値税(VAT)引き上げ撤回によって、国民統一政府(GNU)から民主同盟(DA)の脱退は回避されたが、依然として対立の火種はくすぶっており、前週末には「100人以上の国会議員がGNUに対してDAを排除するように要求した」との報道も伝わっている。また、VAT引き上げの撤回によって生じる750億ZARの歳入不足についても懸念材料。南アフリカ財務省は21日に2025年度の第3次予算を提出する予定となっているが、内容次第では南ア経済およびZAR相場の重しとして意識される可能性もありそうだ。
5月5日週の回顧
豪ドルは対円で横ばい。対ドルでは買い先行となっていたが、米連邦準備理事会(FRB)が改めて早期の利下げに慎重な姿勢を示すとやや売りに押された。ZARは対ドル・対円でともに底堅く推移。国営電力会社であるエスコムが「今年の冬(今後4カ月)は停電を回避できる見込み」との見解を示したことを好感した買いが入った。(了)
(執筆:5月9日、9:00)