東京為替見通し=ドル高是正棚上げはトリプル安の影響もあるか、週末は日米関税協議
昨日の海外市場でドル円は、日本時間夕刻に一時142.81円と7日以来の安値を付けたものの、5月米PMI速報値が予想より強い内容だったことが伝わり、円売り・ドル買いが優勢に。米国株相場や米国債相場の持ち直しとともにドル買い戻しも優勢となり、144.33円付近まで値を上げた。ユーロドルは、足もとで進んでいた米国の「トリプル安(株安・債券安・通貨安)」を巻き戻す動きが活発化し、一時1.1256ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でドル円は、中長期的なドル売りトレンドは継続されるものの、昨日の下げ幅をすべて取り戻したことで、週末を前にした調整相場になりやすそうだ。ただ、政治的イベントを控えていることもあり、報道次第で再び急激に相場展開が変わるリスクがあることには警戒したい。
昨日は日米財務相会談で「為替水準に関する議論」が見送られたことで、一定のドル買い・円売りが出た。ただ、米国が貿易不均衡解消を目指しているなかで、日本だけでなく韓国、台湾などは交渉のもち札が少なく、不均衡解消を為替で行う(ドル高是正)という考えを拭い去ることはできないだろう。仮に、一国の通貨だけでのドル高是正を行う場合でも、他通貨へ波及するなど問題が複雑化することで、アジア数カ国の間で同時に是正を発表する可能性が高い。
また、ドル高是正を進める場合でも、現行の米トリプル安を促すのはタイミングが悪いこと、日本は7月に参議院選挙、韓国は6月3日に大統領選挙を控えていることで、トリプル安に歯止めがかかり、両国の選挙が終わるまで、もしくはある程度の見通しがつくまでは、ドル高是正の公表を棚上げするのかもしれない。一部では参院選前にはなるが、6月15-17日にカナダ・カナナスキスで予定されているG7サミットで合意されるとの憶測もある。
日本時間の24日に行われる第3回目の日米関税協議だが、赤沢経済再生相は「早期に合意することを優先するあまり日本の国益を損なうものであってはならない」と述べ、ラトニック米商務長官も「日本と韓国との交渉締結は早くはないだろう」と発言していることで、週末に合意を期待するのは難しそうだ。ただ、警戒は怠らないようにしたい。市場では、先週の米韓関税交渉では、鄭仁教・韓国通商交渉本部長が「グリア米通商代表部(USTR)代表との協議で為替は取り上げられなかった」と述べたこともあるように、赤沢氏も同様のコメントを述べることになるとの予想が多い。
なお、昨日はトリプル安の巻き戻しが入ったとはいうものの、引き続き米債の動きには注目したい。トランプ米大統領による大型の税制・歳出法案(「big, beautiful bill」)が昨日下院で共和党議員2人が民主党議員とともに反対したが、賛成215票、反対214票で可決された。今後上院に送られ、上院は法案の条項を承認または変更する機会を得ることになる。この法案が通過すれば、米国の債務は5.2兆ドル増加し、来年度には財政赤字が約6000億ドル増加すると推定されている。同法案が今後の米債市場の動向に否が応でも影響を与えることになるだろう。
本日は本邦から経済指標では、4月の全国消費者物価指数(CPI)が公表される。通常は、インフレ指標の中でも最も注目度の高い同指標だが、トランプ関税の影響が今後のインフレ率に急激な変化をもたらす可能性があることで、同月の指標での市場の反応は限られるか。昨日野口日銀審議委員が「しばらくはむやみに動かず現状注視していくのが基本」と講演で述べたように、今後のインフレ進行度合いを見定めるまでは、日銀の政策変更も難しいだろう。
(松井)
本日の東京時間でドル円は、中長期的なドル売りトレンドは継続されるものの、昨日の下げ幅をすべて取り戻したことで、週末を前にした調整相場になりやすそうだ。ただ、政治的イベントを控えていることもあり、報道次第で再び急激に相場展開が変わるリスクがあることには警戒したい。
昨日は日米財務相会談で「為替水準に関する議論」が見送られたことで、一定のドル買い・円売りが出た。ただ、米国が貿易不均衡解消を目指しているなかで、日本だけでなく韓国、台湾などは交渉のもち札が少なく、不均衡解消を為替で行う(ドル高是正)という考えを拭い去ることはできないだろう。仮に、一国の通貨だけでのドル高是正を行う場合でも、他通貨へ波及するなど問題が複雑化することで、アジア数カ国の間で同時に是正を発表する可能性が高い。
また、ドル高是正を進める場合でも、現行の米トリプル安を促すのはタイミングが悪いこと、日本は7月に参議院選挙、韓国は6月3日に大統領選挙を控えていることで、トリプル安に歯止めがかかり、両国の選挙が終わるまで、もしくはある程度の見通しがつくまでは、ドル高是正の公表を棚上げするのかもしれない。一部では参院選前にはなるが、6月15-17日にカナダ・カナナスキスで予定されているG7サミットで合意されるとの憶測もある。
日本時間の24日に行われる第3回目の日米関税協議だが、赤沢経済再生相は「早期に合意することを優先するあまり日本の国益を損なうものであってはならない」と述べ、ラトニック米商務長官も「日本と韓国との交渉締結は早くはないだろう」と発言していることで、週末に合意を期待するのは難しそうだ。ただ、警戒は怠らないようにしたい。市場では、先週の米韓関税交渉では、鄭仁教・韓国通商交渉本部長が「グリア米通商代表部(USTR)代表との協議で為替は取り上げられなかった」と述べたこともあるように、赤沢氏も同様のコメントを述べることになるとの予想が多い。
なお、昨日はトリプル安の巻き戻しが入ったとはいうものの、引き続き米債の動きには注目したい。トランプ米大統領による大型の税制・歳出法案(「big, beautiful bill」)が昨日下院で共和党議員2人が民主党議員とともに反対したが、賛成215票、反対214票で可決された。今後上院に送られ、上院は法案の条項を承認または変更する機会を得ることになる。この法案が通過すれば、米国の債務は5.2兆ドル増加し、来年度には財政赤字が約6000億ドル増加すると推定されている。同法案が今後の米債市場の動向に否が応でも影響を与えることになるだろう。
本日は本邦から経済指標では、4月の全国消費者物価指数(CPI)が公表される。通常は、インフレ指標の中でも最も注目度の高い同指標だが、トランプ関税の影響が今後のインフレ率に急激な変化をもたらす可能性があることで、同月の指標での市場の反応は限られるか。昨日野口日銀審議委員が「しばらくはむやみに動かず現状注視していくのが基本」と講演で述べたように、今後のインフレ進行度合いを見定めるまでは、日銀の政策変更も難しいだろう。
(松井)