東京為替見通し=ドル円、本邦物価指標や植田日銀総裁の発言に要注目か

 26日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、英国がスプリング・バンク・ホリデー、米国がメモリアルデーの祝日で取引参加者が減少する中、欧州株式相場や時間外の米株先物が底堅く推移したことで143.03円付近まで上昇した後、142円台後半でのもみ合いに終始した。ユーロドルは、「欧州連合(EU)は米国との貿易交渉を迅速化する方針」などの報道が伝わったものの、1.13ドル台後半での狭いレンジ内推移に終始した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、4月企業向けサービス価格指数や基調的なインフレ率を捕捉するための指標、そして植田日銀総裁の発言などから、日銀の追加利上げの時期を見極めていくことになる。

 8時50分に発表される4月企業向けサービス価格指数は前年比+3.0%と予想されており、3月の同比+3.1%、2月の同比+3.2%からの低下傾向が見込まれている。しかしながら、予想通りだと7カ月連続での3%台となり、人件費が価格に転嫁する動きが続いていることが確認できることになる。

 9時からの植田日銀総裁の日本銀行金融研究所主催国際コンファランスでのあいさつでは、トランプ関税の不確実性の緩和や日本の4月のコアCPI(生鮮食品を除く)が前年比+3.5%上昇していたことを受けての追加利上げ時期への言及に注目しておきたい。

 植田日銀総裁は「基調的な物価上昇率が2%に高まれば、利上げで緩和を調整する」と述べていたことで、14時に発表される4月の基調的なインフレ率を捕捉するための指標にも注目しておきたい。3月分は、「刈り込み平均値」は前年比+2.2%だったが、「加重中央値」と「最頻値」は同比+1.4%となり、2%を大幅に下回ったままだった。

 また、本日も引き続きトランプ米大統領のSNSへの投稿には警戒しておきたい。
 米中通商交渉に関しては、90日間の関税率引き下げで合意しているものの休戦状態に過ぎず、第1次トランプ米政権の時は、米国サイドが合意を破棄して関税報復合戦が始まった。
 米欧通商交渉は、23日に6月1日から50%関税発動、25日には7月9日まで延期など関税政策のアドバルーンの上げ下げが繰り返されており、交渉が難航した場合は、期限前に関税が発動される可能性もあるため、不確実性を払拭できない状態が続くことになる。

 日米通商交渉も、先週の第3回交渉に続き、今週末には第4回交渉の可能性が示されているが、石破首相は6月のG7サミットでの日米首脳会談が交渉の節目になるとの認識を示している、と報じられている。

 23日の日米首脳電話協議では、トランプ米大統領が力を込めたのは、米国製戦闘機の売り込みだった、と報じられている。
 ウクライナや中東での米国の地政学的な影響力が後退しつつある中、関税政策でも袋小路に入りつつあるのかもしれない。


(山下)
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