東京為替見通し=ドル円は40年物国債入札、豪ドルは4月CPIに要注目

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、本邦長期金利の低下や欧米株式相場の堅調推移、5月米消費者信頼感指数が予想を大きく上回ったことなどを受けて144.45円まで上昇した。ユーロドルは、予想を下回った5月仏消費者物価指数(CPI)速報値や予想を上回った米経済指標の結果などを受けて1.1324ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本国債の供給減少の思惑から楽観的な見方が強まっている40年物国債入札状況を見極めることになる。豪ドルは、4月豪消費者物価指数(CPI)で豪準備銀行(RBA)の追加利下げの可能性を見極め、NZドルは、利下げが予想されているニュージーランド準備銀行(RBNZ)の声明文で追加利下げの可能性を見極めることになる。

 10時30分に発表される4月豪CPIは、前年同月比+2.3%と予想されており、3月の同比+2.4%からの伸び率鈍化が見込まれている。予想通りだった場合、ブロック総裁が「インフレの低下が続くようであればさらに金利を引き下げる余地がある」と述べたように、RBAの追加利下げ観測が高まることになる。

 11時に発表されるRBNZの政策金利は、6会合連続での3.25%への引き下げが予想されている。しかし、前回の利下げ幅が0.25%へと縮小されており、現在の緩和サイクルが一段落する可能性もあることで、声明文やホークスビーRBNZ総裁の会見などで今後の緩和余地を見極めることになる。

 12時35分に行われる40年物国債入札は、財務省が2025年度の国債発行計画見直しを検討との報道や利回り水準の高さなどから順調に消化されるとの期待が高まっている。しかし、財政赤字のファイナンスを巡る懸念を解消できるわけではないため、過去最高水準まで上昇した利回りの下での債券市場の審判を見極めることになる。

 5月16日、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが米国債の「AAA(トリプルA)」格付けを剥奪したことで、財政健全化を求める債券自警団による債券の売り圧力が強まりつつある。S&Pグローバルの「Capital IQ」モデルでは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場の価格に基づき、米国債格付けを現行水準より6段階低い「BBB+(トリプルBプラス)」に相当する、すなわち、かろうじて投資適格級にとどまる水準だと示唆している。

 5月19日、石破首相が「日本の財政状況がギリシャの債務危機時よりも深刻である」と警告したことで、日本の債券市場も売り圧力に晒されつつある。
 5月20日、日本の20年国債入札は2012年以来の最低の入札率となり、30年物国債と40年物国債の利回りが過去最高水準まで上昇(債券価格は下落)した。

 本日の40年物国債入札は、以下のような逆風下で実施されるために要警戒となる。
 日銀による量的金融緩和政策による国債購入が減少する中、債券投資家が日本国債への需要を減らし、財政の持続可能性に疑問を持ち始めている。そして、需要低下により利回りが上昇し、政府の借入コストが増加することで、財政状況がさらに悪化する悪循環が警戒されている。さらに、日本の債券市場の動揺が、格下げを受けた米国債市場に悪影響を及ぼしつつあり、トランプ関税の不確実性とともに、グローバルな金融市場に混乱をもたらす可能性が高まっている。

 日本の国債市場の利回り上昇、すなわち、日本国債売りは、米国債売りによる「トリプル安」という当該通貨のドル売りではなく、日本の長期金利上昇による当該通貨の円買い要因と見なされている。
 3月末時点の米国債発行残高28兆5,825億ドルに対する海外勢の保有残高は9兆500億ドルと約32%を占めるが、海外投資家の日本国債保有率は約12%程度(※長期債:6%)であるため、日本国債発のトリプル安(円安)の震度は低いのではないだろうか。


(山下)
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