東京為替見通し=ドル円、日米10年債利回り動向を見極めながら上値を模索する展開か

 28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米長期金利の上昇などを受けて145.08円まで上昇した。ユーロドルは全般にドル買いが強まった流れに沿って、1.1284ドルまで下落した。ユーロ円はドル円の上昇につれた円売り・ユーロ買いで163.91円まで値を上げた。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日米10年債利回りを見極めながら上値を模索する展開が予想される。

 ニューヨーク市場のドル円は、米10年債利回りの上昇を受けて145円台まで上値を広げている。
 本日は、米中が追加関税115%引き下げ合意を受けた12日の高値148.65円から27日の安値142.12円までの下落幅の半値戻し145.39円や一目均衡表・基準線145.31円を念頭に置きながら買い戻しの射程を見極めることになる。

 米10年債利回り上昇の背景としては、昨日、ウィリアムズ米NY連銀総裁が東京での講演で「インフレが目標から乖離し始めた際に中央銀行は、比較的強力に対応しなければならない」と述べたこと、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、トランプ関税によりインフレが予想以上に持続するリスクが警戒されていたことなどが挙げられる。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、年内の利下げは9月と12月の2回となっているが、明日はFRBがインフレ指標として注視している4月のPCEデフレーターが発表される。

 本邦10年物国債の利回りも高止まりしているが、背景には、昨日実施された40年利付国債入札で、応札倍率2.21倍が2024年7月以来の低水準になるなど低調だったことが挙げられる。トランプ関税を巡る不確実性や参議院選に向けた政府支出拡張懸念など、市場の警戒感は消えていない。
 昨日公表された日本銀行の2024年度決算では、保有する国債を時価でみた評価損が過去最大の28兆6246億円だった。植田日銀総裁は、かつて、「金利全般が1%上昇した場合、日銀が保有する国債の評価損は約40兆円程度発生する」と述べていた。国債価格の下落は、約半分を保有する日銀だけでなく、機関投資家の含み損を拡大させていくことになる。

 不確実性の源泉となっている通商交渉に関するイベントとしては、本日は、欧州連合(EU)のシェフチョビッチ欧州委員(貿易・経済安全保障担当)と、ラトニック米商務長官およびグリア通商代表部(USTR)代表が通商協議を行い、明日は、赤沢経済再生相とベッセント米財務長官が第4回日米通商交渉を行うことになっている。

 米国とEU、日本との通商交渉に向けて、トランプ米大統領がSNSなどに、交渉が決裂した場合の関税発動前倒しなどを投稿する可能性には警戒しておきたい。


(山下)
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