東京為替見通し=ドル円、米金利先高観から底堅くも円安牽制発言に要警戒か

 9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧州市場で141.51円まで下落した後、142.82円付近まで反発した。ユーロドルは、欧州市場で1.0113ドルまで上昇した後、1.0032ドル付近まで反落した。ユーロ円は142.64円まで軟調に推移した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げ観測から底堅い展開が予想されるものの、先週の三者会合(財務省・金融庁・日銀)後の神田財務官発言や岸田首相と会談後の黒田日銀総裁の発言を受けて、上値は限定的だと思われる。また、指し値オペの動向にも注意しておきたい。

 神田財務官は、「最近の円安進行は明らかに過度な変動であり、政府・日銀は極めて憂慮している。あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」と円安を牽制した。黒田日銀総裁は、「1日に為替が2円も3円も動くというのは急激な変化。急激な変動は企業の経営方針を不安定にし、将来の不確実性を高めてしまうという意味で好ましくない。為替市場の動向は十分、今後とも注視して参りたい」と急速な円安の動きを牽制した。

 今年のドル円相場の年初来上昇率は、変動相場制が導入された1973年以降で最大。円安の大きな要因は、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策正常化に踏み出しているにも関わらず、日本銀行はマイナス政策金利(▲0.10%)を堅持し、イールドカーブコントロール(YCC)により日本国債10年債利回りの上限を0.25%にしていることが挙げられる。

 来週20-21日のFOMCでは、FF金利誘導目標が0.75%引き上げられることが予想されている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日のFOMCでの0.50%の利上げ確率は9%、0.75%の利上げ確率は91%まで上昇した。

 21-22日に開催される日銀金融政策決定会合でのリスクシナリオとしての円安対応策は、イールドカーブコントロールの「年限の短期化」とゼロ%を中心に上下0.25%程度としている長期金利の「許容変動幅の拡大」が想定される。

 また、神田財務官の発言「あらゆる措置を排除せず」では、1998年以来のドル売り・円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。ドル売り介入の原資は、日本がこれまで輸出業者のために行ってきたドル買い介入により保有している米国債(※6月末時点で1兆2363億ドル)を売ることになる。

 7月の輸入物価指数が前年比48.0%上昇したことの22.6%は円安によるものであり、輸入業者や消費者にとっての「悪い円安」を抑えるためのドル売り・円買い介入の断行を予告する、「排除」や「断固」という発言に警戒しておきたい。

 一方で、米国財務省は「為替報告書」の中で、急速な円安に対して「為替介入は事前に適切な協議をした上で、極めて例外的な状況」のみに認められると釘を刺している。そして、円相場の年初からの急落については、日銀が緩和的な金融政策スタンスを維持していることに起因する金利差が主な要因との見方を示しており、本邦通貨当局の円買い介入の前に、日本銀行が金融政策の正常化に向かうべき、と警告している。





(山下)
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