東京為替見通し=ドル円、155円KOの攻防戦と円買い介入の可能性に要警戒か

 22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期が先延ばしになるとの観測などから154.85円まで上昇し、1990年6月以来約34年ぶりの高値を更新した。ユーロドルは欧米の金利差拡大への思惑から1.0624ドルまで下落したが、下値も支えられた。ユーロ円は164.40円から165.03円付近まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、155円のノックアウト・オプションへの買い仕掛けと防戦売りとの攻防戦が予想される中、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開となる。

 ニューヨーク市場のドル円は154.85円まで上昇して、1990年6月以来の高値を更新し、155.00円のノックアウト・オプションに迫っている。
 背景には、米国のインフレ率が下げ止まっていることで、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ開始時期が秋以降に先送りされるとの見方や日銀金融政策決定会合での追加利上げが夏以降になるのではないか、との見方がある。

 植田日銀総裁は先週ワシントンでのG20会議後の記者会見で、円安による輸入物価の上昇が基調的な物価上昇率に影響を与える可能性に言及し、「無視できない大きさの影響が発生した場合には金融政策の変更もあり得る」と述べていたものの、今週末25-26日の会合では、ゼロ金利での据え置きが見込まれている。

 神田財務官は、先週のG7会議の後、為替の過度な変動や無秩序な動きは経済や金融に悪影響を与えるとし、日本の主張に沿ってG7声明に為替文言が盛り込まれたと述べていた。「令和のミスター円」の異名を持つ神田財務官は、2022年秋の円買い介入による円安阻止の手腕が評価されて異例ともいえる3年目の続投となっているが、今夏の退任が予定されている。
 これまでの所、「投機による過度な変動は容認することはできない。行き過ぎた変動に対してはあらゆる手段を排除せずに適切な行動をとる。常に準備はできている」と投機的な円売りを口先で牽制するに留まっている。
 退任前に「勝つ介入」を断行して有終の美を飾るのか、それとも34年ぶりの円安水準を放置して投機筋に不戦敗で去るのか要注目となる。

 神田財務官は、円買い介入の大義名分として、投機筋による円売りとボラティリティーの拡大を挙げていた。
 4月16日時点のIMM通貨先物の投機筋の円売り持ちネットポジションは、165619枚(x1250万円=約2兆円)と、2007年6月26日以来(188077枚)17年ぶりの高水準となっている。2007年の円売り持ちポジションは、8月のパリバショックを発端とするサブプライムローン問題や9月のFOMCによる0.50%(5.25%⇒4.75%)の緊急利下げによって手仕舞われた。

 なお、ボラティリティー増大を示唆するボリンジャー・バンド+2σは155.45円付近にあり、2022年10月の円買い介入は、12-13日のG20会議の後、21日と24日に覆面介入が実施されている。

 現状の円安と原油高を前提にした試算では、家計の負担が年間でおよそ11万円増えるとのことであり、今春の大幅な賃上げや4万円の定額減税の恩恵が感じられなくなることで、岸田政権にとっては円安阻止は喫緊の課題だと思われる。

(山下)
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