東京為替見通し=ドル円、日米金融政策で底堅い展開だが円買い介入には要警戒か

 20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、FOMC結果公表前の思惑的なドル買いで151.82円まで上昇した後、観測記事「日銀の追加利上げ『10月』『7月』観測」を受けて150.73円まで反落したものの、151.40円付近まで反発した。ユーロドルは、欧州市場の安値1.0836ドルから1.0923ドルまで上昇。ユーロ円は米株式相場が底堅く推移したことで165.35円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、19日の日銀金融政策決定会合でのハト派的利上げと、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのタカ派的据え置きを受けて底堅い展開が予想されるものの、ドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 19日の日銀金融政策決定会合では、マイナス金利(▲0.10%)からゼロ金利へ引き上げられたものの、「当面の間は緩和的な金融環境を維持する」と表明されたことで、ハト派的な利上げとなり、ドル円は151.82円まで上昇して年初来高値を更新している。

 20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、5会合連続での政策金利の据え置きが決定されたものの、ドット・プロット(金利予測分布図)で2024年の3回の利下げ予想が前回の11人から10人へ減り、2025年の利下げ予想が前回の4回から3回へ減ったことで、ややタカ派的な据え置きとなっている。

 日銀金融政策決定会合での「当面の間は緩和的な金融環境を維持する」との表現は、2006年7月にゼロ金利から0.25%へ引き上げられた時と同じであり、2007年2月に0.50%へ引き上げられている。昨日も「日銀は7月か10月に追加利上げを検討している」との観測記事が報じられており、今後も予断を許さない状況が続くことになる。

 岸田首相は年初の施政方針演説で「2024年に物価高を上回る所得を実現する」と公約していた。春季労使交渉(春闘)では33年ぶりの高水準の賃上げが実現し、6月の所得税・住民税の定額減税により所得面は実現しつつある。4月の衆議院補欠選挙や秋の総裁選に向けて、物価高の抑制は喫緊の課題であると思われることで、輸入物価の上昇要因となる円安に関しては、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入によって抑えたいのではないだろうか。

 また、植田日銀総裁は、物価を押し上げる主役が「第1の力」から「第2の力」に徐々にバトンタッチし、賃金と物価の好循環が強まっていく姿をメインシナリオと考えている。
 ドル円が151円台に乗せていることで、円安による輸入物価上昇の価格転嫁による物価上昇圧力「第1の力」への警戒感が高まりつつある。
 2022年秋のドル円151円台は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入で反転させられており、今回も円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 8時50分に発表される2月の本邦の貿易統計では、季節調整前で8102億円の赤字、季節調整済で8401億円の赤字と予想されており、本邦実需筋による円売り圧力を確認することになる。

 9時30分に発表される2月の豪雇用統計では、失業率が4.0%、新規雇用者数が+4.00万人と予想されている。18-19日の豪準備銀行(RBA)理事会では政策金利4.35%が据え置かれたばかりであり、予想から大幅に外れない限り、豪ドルへの影響は限定的だと思われる。

(山下)
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