東京為替見通し=ドル円、中東情勢緊迫化による有事のドル買いで底堅い展開か

 13日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、イスラエルとイランの軍事衝突が激化し、リスク・オンのドル買いが優勢となり、一時144.48円まで上昇した後、ダウ平均の大幅下落を受けたリスク・オフの円買いで143.85円付近まで下押しした。ユーロドルは、中東情勢の緊迫を背景にした有事のドル買いで一時1.1489ドルまで下落後、1.1569ドル付近まで下値を切り上げた。ユーロ円は、米国株相場の下落により、166.59円から165.99円付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、中東の地政学リスクの高まりを受けた有事のドル買いで底堅い展開が予想される中、中東情勢関連のヘッドラインに警戒しながら、G7首脳会議でのトランプ関税や中東情勢への対応、そして日米の金融政策決定会合での決定を見据えていくことになる。

 トランプ米大統領は、昨日、イスラエルとイランの衝突に米国が関与する可能性があるとの認識を示しており、米国がイスラエル支援に踏み切った場合は、ドル売りの可能性が高まることには警戒しておきたい。

 先週13日にイスラエル軍がイランの核兵器開発を阻止するために核・弾道ミサイル関連施設を攻撃し、イランも反撃していることで、最悪のシナリオとして第5次中東戦争が勃発する可能性、すなわち、ホルムズ海峡の封鎖などで、原油価格が120-130ドル辺りまで上昇する可能性を念頭に入れて相場に臨むことになる。
 1973年の第4次中東戦争(1973年10月6日~10月23日)では、第1次オイルショックにより、原油価格は1バレル=3ドル台から11.65ドルまで上昇した。

 本日から開催される日銀金融政策決定会合や明日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、前回同様にトランプ関税の不確実性に加えて、中東の地政学リスクの不透明性を理由に政策金利の据え置きが予想されている。しかし、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の上昇の可能性、すなわち、インフレ率の上昇という懸念が高まる中での予防的な早期利上げに関する議論に注目しておきたい。

 イスラエルは、イラン政権によるイスラエル国家を破壊するための「イスラエル破壊計画」を理由に、イランの核兵器開発を阻止するために予防的な先制攻撃に踏み切ったと表明している。
 イランの核関連施設は地下60-90メートルに埋設されているため、数発のバンカーバスター(地中貫通爆弾)での攻撃が必要とのことだが、13日の第1段階の攻撃では、イランの防空システムを破壊したとのことで、今後は第2段階での核関連施設への集中攻撃が警戒されている。
 しかし、イスラエル軍が目的通りにイランの核燃料濃縮施設を破壊した場合、周辺地域が放射能汚染に襲われることになりかねないため、イスラエルの国際的な孤立懸念が高まることになる。

 トランプ米政権は、13日のイラン攻撃は事前に通告されていたものの、15日に予定されていた6回目の米国・イラン核協議が中止となったことで面子を潰されたことになり、今後の対応にも注目しておきたい。
 




(山下)
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