東京為替見通し=ドル円、日米のインフレ指標を見極める展開か

 29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米経済指標が全般にさえない結果となり、米長期金利の低下とともに143.96円まで下押しした。ユーロドルは、全般にドルの売り戻しが強まった流れに沿って、1.1385ドルまで上値を伸ばした。ユーロ円は、ドル円の失速につれて163.35円まで下落後、ユーロドルの上昇を受けて164.03円付近まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、全国5月の消費者物価指数の先行指標となる5月東京都区部CPIを見極め、今夜発表される米4月PCEデフレーターを待つ展開となる。

 昨日のドル円は、米国際貿易裁判所(共和党政権指名判事3名対民主党政権6名)によるトランプ関税の一部差し止め命令を受けて146.28円まで上昇したが、トランプ米政権が即日控訴し、連邦巡回控訴裁判所が差し止め命令を一時停止する判断を下したことなどで、144円割れまで反落している。今後もトランプ関税に関するヘッドラインに警戒しておきたい。
 差し止め命令に関しては、連邦最高裁判所(共和党政権指名6名対民主党政権3名)の判断に委ねられることも考えられる。

 8時30分に発表される5月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合)は、前年比+3.5%と予想されており、4月の同比+3.4%からの上昇が見込まれている。全国5月のコアCPI(生鮮食品を除く)の先行指標となるため、予想通りに上昇していた場合は、日銀の早期利上げ観測が高まることになる。
 翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む日銀の追加利上げ時期は、先日の日銀金融政策決定会合でのハト派的据え置きを受けて、今年10月以降まで先延ばしされている。

 昨日、トランプ米大統領が就任後初めてパウエルFRB議長と会談し、改めて利下げを要請した。先日、植田日銀総裁は「足もとの物価上昇、ユーロ圏や米国より高くなっている」と述べたが、日本のインフレ率は最高で、政策金利は最低となっている。

         《総合消費者物価指数》 《政策金利》
・日本銀行(BOJ):+3.5%           0.50%
・米連邦準備理事会(FRB):+2.3%       4.25-50%
・欧州中央銀行(ECB):  +2.2%        2.40%
・イングランド銀行(BOE):+3.5%       4.25%
・カナダ銀行(BOC):+1.7%          2.75%
・豪準備銀行(RBA):+2.4%          3.85%
・NZ準備銀行(RBNZ):+2.5%(Q4)       3.25%

 ちなみに、今夜発表される4月の米PCEデフレーターは前年比+2.2%と予想されており、3月の同比+2.3%からの伸び率の鈍化が見込まれている。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視している指標がインフレ目標2%に接近しつつあることで、明朝に予定されているデイリー米サンフランシスコ連銀総裁の講演での言及に注目することになる。


(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。