東京為替見通し=ドル円、4日発動予告の鉄鋼関税関連のヘッドラインに注目

 昨日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、4月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を上回ったことも後押しに一時144.11円まで反発した。ユーロドルは5月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が予想を下回ったことやドル高を重しに1.1364ドルまで弱含んだ。また、ユーロ円は欧米株高も支えに163.87円まで上昇した。

 本日の東京タイムではドル円の動意につながりそうな指標発表などは乏しく、日本株や日米長期金利の動向を睨んだ動きが想定されるが、トランプ関税への不安で上値の重い地合いが続くと見込まれる。なお、午前には1-3月期豪GDPの発表が予定されており、豪準備銀行(RBA)が次回7月会合で追加利下げに踏み切るとの市場の見方を後押しする結果になるかどうかに注目。

 トランプ米大統領は4日から鉄鋼・アルミニウムに課す追加関税を25%から50%に引き上げると表明しており、関連のヘッドラインに注目。トランプ米政権が貿易相手国に4日までに最善の貿易交渉案を提示するよう求めたとの報道もあり、朝令暮改が日常茶飯事になっているトランプ米大統領が関税の発動を再び先延ばししても驚くことではないだろう。

 先週末にトランプ米大統領が鉄鋼関税の引き上げを示唆した後にドル安が進み、米株・米債も売りが入る場面があった。しかしながら株と債券の反応は限られ、「米国売り」再燃への懸念が大きく膨らむことはなかった。ただし、関税による米経済・インフレへの不安は根強いだけに警戒感は残されている。

 今週中にも米中首脳が電話会談を行う可能性が報じられ、いったん米中の緊張感の高まりを嫌気した動きも一服しているが、両国が今後報復措置を強化する可能性もある。また、米政権の鉄鋼関税引き上げ方針に欧州連合(EU)は貿易摩擦解消の取り組みを損なうものだと主張し、報復措置を前倒しする可能性があると警告した。進行中の米・EU交渉が難航することも念頭に置きたい。米政権と中国・EUの摩擦がエスカレートすれば、トランプ米大統領の政策への不信感からドル売りと対米投資を見直す動きが加速することが警戒される。

 トランプ関税に絡んだリスクオフの動きが強まらない限り、足もとで円高に振れる手がかりは乏しい。昨日、植田日銀総裁は経済・物価がいったん足踏みする可能性に言及し、「経済・物価情勢の改善が見込めないなかで無理に利上げすることはない」と述べ若干ハト派寄りの印象を与えた。ほか、本邦10年国債入札が順調な結果となり長期金利が低下した。トランプ関税をめぐる不安が高まらなければ、ドル円はいったん買いに傾くことも念頭に置きたい。

(金)
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