東京為替見通し=ドル円、米中首脳会談を評価し底堅さを維持しつつ目線は米雇用統計へ

 昨日のニューヨーク外国為替市場でドル円は143.97円まで高値を更新した。米中首脳が電話会談を行い、前向きな話し合いができたことが伝わったことが支えとなった。ユーロドルは一時1.1495ドルまで上昇。欧州中央銀行(ECB)は予想通りに政策金利を0.25%引き下げたが、ラガルドECB総裁は「本日の利下げで金融緩和サイクルの終了に近づいた」との見解を示した。ユーロ円はユーロ高とリスクオンの円売りを後押しに164.67円まで強含んだ。


 本日の東京市場では、4月全世帯家計調査・消費支出と4月景気動向指数(CI)速報値の発表が予定されている。指標の結果がドル円の動意につながる可能性は低いが、ともに前月を下回る見込みだ。3月の消費支出は前年比+2.1%と2月のマイナスから上昇に転じたが、実収入は減少しており、同月の消費支出の増加は決してポジティブなものと言えない。

 昨日の海外市場でドル円は、米中貿易摩擦が緩和するとの期待から上昇した。その流れを引き継ぎ東京タイムでは底堅さを維持し、関税関連のヘッドラインに注視しつつ、徐々に今晩の米雇用統計に視線が向けられそうだ。

 先週末から米中による貿易協議の停滞をめぐり両国が非難を強めたが、昨日に米中首脳の電話協議が行われた。トランプ米大統領は「両国にとって非常に前向きな結論となった」と協議内容を評価し、近く米中が閣僚級の会議を開くとの見通しと中国を訪問する意向を示した。今後の米中協議は引き続き難航が予想されるも、いったん両国の緊張感の高まりへの警戒感は和らいだ。

 4日にトランプ米政権は鉄鋼・アルミニウムの関税を50%に引き上げたが、貿易相手国との個別交渉が注目されていることもあり、市場はわりと落ち着いた反応を示している。ただし、複数の貿易相手国は交渉が上手くいかなかった場合は報復措置を取るとしており、関税をめぐる不安は続く。

 5月米雇用統計の予想は、非農業部門雇用者数が13万人増と4月からの鈍化、失業率は前月と変わらず4.2%が見込まれている。市場では、トランプ関税で「雇用の最大化」と「物価の安定」という2大責務の両方に対するリスクが高まったとの見方が多い。今月17-18日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが織り込まれているが、連邦準備制度理事会(FRB)のメンバーからは「雇用最大化」の優先を主張する声も聞かれている。労働市場の悪化が懸念されているなか、雇用統計が予想以上に低調な結果となれば、ドル安・円高に大きく傾く可能性がある。

 4日の5月ADP全米雇用報告の弱い結果にトランプ米大統領はすぐさま反応し、再びパウエルFRB議長に「今すぐの利下げ」を求めた。雇用統計が弱い結果となれば、トランプ氏のFRBへの圧力と攻撃が一層高まることは避けられないだろう。

(金)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。