東京為替見通し=本邦経済指標を確認しつつ地政学的リスクに注意する展開か

 5日のニューヨーク外国為替市場で、ドル円は3月米雇用統計の強い内容に反応して151.75円まで上昇。その後下押すも、米利下げ開始時期が後ずれするとの観測が高まる中では限定的だった。ユーロ円はダウ平均や日経平均先物の上昇を手掛かりに164.44円まで上昇した。また、米雇用統計発表前に1.0848ドルまで上昇したユーロドルは、米雇用統計に反応して一時1.0791ドルまで下落したが、ユーロ円の上昇を手掛かりに1.0844ドル付近まで下げ幅を縮小する動きとなった。

 本日の東京外国為替市場でのドル円は、本邦の経済指標を確認しつつ、リスク回避の動きに注意する展開が予想される。

 本邦の経済指標について、2月の毎月勤労統計の発表が予定されている。市場予想は前年比+1.8%と1月(同+2.0%)をやや下回るがプラスは維持する見通し。4日に連合が発表した2024年春闘の3次集計によると、賃上げ率は平均で5.24%、中小企業でも4.69%であった。もし、本日の指標が予想を上回った場合、賃金の伸びが続いているとの見方から日銀の追加利上げの思惑が浮上し、本邦の金利上昇につながるようなら、円買いの材料となる可能性がある。ドル円は日足・一目均衡表の転換線151.39円を割ると、5日安値150.81円に向けて下押すことも考えられる。また、本邦2月国際収支について、市場予想は貿易収支が1927億円の赤字、経常収支(季調前)は3兆1125億円の黒字となっている。

 とはいえ、日米の金利差は依然として5%以上あるため、仮に本邦の利上げ観測が浮上したとしても、早急にこの差が埋まるとは考えにくい。売りの勢いが一服して5日の上伸を阻んだ4日高値151.77円を上抜くと、152円に観測されているオプションバリア突破を試すことも考えられる。152円に近付く場面では本邦当局者からの介入けん制発言が出ることも想定されるため、こちらにも注意したいところだ。

 他方、中東情勢には引き続き注意したい。3日にシリアにあるイラン大使館が攻撃されたことを受けて「イランは48時間以内にイスラエルを攻撃する可能性」と報じられたが、執筆時点ではイランの報復行動は伝えられていない。万一、イランがイスラエルに対し報復攻撃に踏み切るようだと、市場ではリスク回避の色合いが強まりそうだ。株式市場にとってマイナス材料であり、ドル円のみならずクロス円も神経質な動きを迫られる恐れがある点には留意しておきたい。

(川畑)
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