東京為替見通し=ドル円、米10年債利回り低下や円買い介入警戒で上値が重い展開か

 9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧州市場の高値155.95円から155.40円付近まで反落した。米10年債利回りは、好調な米30年債入札を受けて4.51%台から4.44%台へ低下した。ユーロドルは1.0724ドルから1.0784ドルまで上昇。ユーロ円は欧米の株価指数が堅調に推移したことで167.75円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りが4.4%台へ低下していることや本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感などから上値が重い展開が予想される。

 昨日発表された4月末の外貨準備高では、外貨預金が1577億ドル(3月末:1550億ドル)、外貨証券が9780億ドル(3月末:9948億ドル)となっていた。しかし、財務省の説明では、外貨証券の168億ドルの減少は、金利上昇に伴う時価評価額の減少などが影響したとのことで、介入の有無や原資に関しては5月分の発表を待つことになる。

 神田財務官は、昨日「為替介入に関して、世の中で言われている限界は全く間違っている」と述べていたが、介入原資として外貨預金1577億ドル(=24.4兆円@155円)、外貨証券9780億ドル(=151.6兆円@155円)を念頭に置きながら、ドル円相場に参入していくことになる。

 イエレン米財務長官は4日の講演の後、「介入は噂だと思う。介入は稀であるべき」と述べて円買い介入への否定的な見解を繰り返しており、今週に入ってからの円買い介入の見送りに影響しているのかもしれない。

 円買い介入に関しては、神田財務官が「激しい為替変動が国民経済に与える影響を看過し難い」と述べ、鈴木財務相が「国民生活に与える影響分析しながら適切な対応とる」と述べている。また、植田日銀総裁は、「円安は輸入価格上昇通じて実質所得下げる影響」と述べており、円安による国民生活へのマイナス面を強調していた。

 試算によると、1ドル=154円程度を前提にした場合、2人以上世帯における家計負担増額は今年度、平均10万円超に上るとのことであり、6月に予定されている4万円の定額減税の恩恵を無にすることになる。岸田政権が解散・総選挙を目論んでいるのであれば、150円台の円安を抑える必要があると思われ、イエレン米財務長官の牽制発言にも関わらず円買い介入は今後も続いていくと思われる。

 ドル円の注目水準として、4月29日に付けた1990年4月以来34年ぶりの高値160.17円から3日の安値151.86円までの下落局面の半値戻しである156.02円が重要なレジスタンスとして意識されている。また、過去26日間の中心値である一目均衡表・基準線155.49円も注視しておきたい。

 さらに、4月29日の1回目の介入水準である159円台、2回目の介入水準であり、5月2日早朝の3回目の介入水準でもある157円台が、それぞれ160円という絶対防衛ラインの前の防衛ラインかもしれないことで、接近した場合は警戒しておきたい。

 これまでの介入時間帯は、東京勢が不在の休日、東京勢が参入前の午前5時や午前8時30分頃、東京勢が退出後の午後5時30分頃、そして、午後23時30分頃になっており、「24時間、365日」介入態勢にある神田財務官に対峙していくことになる。


(山下)
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