東京為替見通し=ドル円、米中貿易協議での「著しい進展」報道で堅調推移か

 9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、トランプ米大統領が「中国に対しては80%の関税が適切」と発言したことや米10年債利回りが4.34%台まで低下したことなどで144.83円まで下落後、145.38円付近まで買い戻された。ユーロドルは米長期金利の低下を受けて1.1293ドルまで上昇した後、1.1247ドル付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、週末にスイスで開催された米中貿易協議で米中の貿易戦争の緩和に向けて「著しい進展(substantial progress)」があったと報じられていることで堅調推移が予想される。

 週明けオセアニア市場でドル円は146円台に上昇しており、目先の上値の目処としては「雲の下限147.91円」や「200日移動平均線149.69円」などが挙げられる。

 米国側代表のベッセント米財務長官は「非常に重要な貿易協議において『著しい進展』があったことを報告できて嬉しい」と述べ、トランプ米大統領に協議の進捗状況を報告し、12日に詳細を説明すると述べた。

 中国側代表の何立峰副首相は「『著しい進展』があり、今後の協議に向けた枠組みを設けることで両国が一致した」と述べ、共同声明の発表を約束した。

 英米貿易協定合意や米中貿易協議の進展を受けて、IMMシカゴ筋の過去最大規模の円のネット買い持ちポジションに代表されるドル円のショートポジションが手仕舞われる可能性が高まりつつある。

 IMMシカゴ筋は、今年1月にドル円が155円付近で推移していた頃、円の売り持ちポジションから買い持ちポジションに転換し、152円付近では過去最大規模に拡大して、4月29日時点(※NY終値:142.33円)では179,212枚まで過去最大を更新していた。5月6日時点(※NY終値:142.45円)では、若干減って176,859枚(-2,353枚)となっていたが、先週末の146円台までの上昇でどの程度減っているのかは、今週末の発表待ちとなる。

 シカゴ筋がドル売り・円買いのポジションに傾いた背景には、日銀の追加利上げ観測、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測、トランプ関税を巡るドル下落観測などがあったと思われる。

 しかし、日銀金融政策決定会合では、トランプ関税の「不確実性」を理由にハト派的な据え置きとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも「不確実性」を理由に、タカ派的な据え置きとなっており、米英貿易協定の締結合意や米中貿易協議での進展を受けて、ドル売り・円買いのベクトルが後退しつつある。



(山下)
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