週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、米関税影響薄く堅調維持

◆ポンド、他国に比べ関税の影響は薄く堅調な動きが続く
◆ポンド、2-4月賃金データに注目
◆加ドル、米・加協議の動向に注目

予想レンジ
ポンド円 192.00-197.00円 
加ドル円 102.50-106.50円 

6月9日週の展望
 金融相場全体が関税をめぐるトランプ米大統領の言動に振り回される相場展開が続いており、ポンドは独自の材料で動意づく場面が少なくなっている。ただ、関税がドルの上値圧迫要因となっていることや、米政権と貿易相手国との協議がなかなかスムーズに進まない中で英国は既に合意に達しており、相対的に関税不安が緩いことを鑑みるとポンドの堅調地合いが続く可能性が高い。トランプ米政権は4日から鉄鋼・アルミニウム関税を50%に引き上げたが、英国に対しては25%に据え置いた。また、米英交渉の合意に従って7月9日以降に税率を調整し、一定の英国製の鉄・アルミ製品に限り25%より低い税率での受け入れを決める可能性があるとしている。なお、現在も医薬品など5月合意時に盛り込まれなかった分野についての協議が続けられている。

 来週、英国内では2-4月雇用・賃金データや4月GDP・鉱工業生産などの指標発表が予定されている。1-3月の週平均賃金(除賞与)は前年比5.6%とやや伸びが鈍化した。依然として高い水準ではあるが、賃金上昇圧力の緩和が続くとの見方が強い。
 
 イングランド銀行(英中銀、BOE)のベイリー総裁は今週、「金利の方向は依然として下向きだと考える」としながらも、利下げのペースや金利の最終到達点に関しては、「これまで以上に不確実性が高くなっている」と述べた。これまでよく使っていた「不確実性」に「予測不能」という言葉も付け加えている。また、「賃金上昇の鈍化が追加利下げの決定的な条件になる」と強調した。

 加ドルは、来週、カナダ国内で動意につながりそうな経済指標の発表や注目イベントは予定されておらず、関税関連のヘッドラインやドルの動きに左右されそうだ。トランプ関税はカナダの経済に大きな逆風となっているが、ドル安を支えに加ドルは底堅い動きが続いている。カーニー加首相は、トランプ米政権の関税措置の撤廃に向けた交渉が成功しなかった場合に備え、「対抗措置を準備している」と述べた。隣国のカナダに対しては、トランプ米大統領はかなり厳しい目線を向けており、今後貿易摩擦の激化も警戒される。

 カナダ中銀(BOC)は今週の会合で政策金利を2.75%で据え置いた。据え置きは2会合連続で、「米貿易政策の影響を見極める必要がある」とした。ただ、「関税の影響で経済が弱体化した場合は追加利下げが必要になる可能性」と、先行きの利下げに含みを持たせた。次回7月会合での利下げ予想は5割程度。年末の政策金利は2%前後と今年あと2-3回の利下げが見込まれている。

6月2日週の回顧
 週初は米中の貿易摩擦再燃懸念やトランプ米政権の鉄鋼・アルミニウム関税引き上げ方針を背景にリスク回避の円買いが先行したが、米中首脳会談を好感して切り返すなど方向感は出ていない。ポンド円は192円後半、加ドル円は103円後半で下げ渋った。関税懸念によるドルの重い地合いは変わらず、ポンドドルは2022年2月以来の1.36ドル台復帰を果たした。また、BOCの政策金利据え置きも加ドルの支えに、ドル/加ドルは1.36加ドル前半まで加ドル高に振れた。(了)
(執筆:6月6日、9:00)
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