東京為替見通し=米中協議・中銀独立性軽視・加州抗議活動など注目点が多い
先週末の海外市場でドル円は、米中首脳電話会談を受けて、貿易摩擦が激化するとの懸念が和らぐ中、円売り・ドル買いが先行した。5月米雇用統計で非農業部門雇用者数や平均時給が強い内容だったことが分かると、米長期金利の上昇とともに全般ドル買いが加速し一時145.09円まで上昇した。ユーロドルは1.1372ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、先週後半のドルの買い戻しの流れが続き、底堅さを維持するか。特に、本日行われる米中閣僚級協議に対する期待感がドル円を支えることになりそうだ。
本日ロンドンで行われる予定となっている米中閣僚級協議は、ベッセント米財務長官をはじめラトニック米商務長官、グリア通商代表部(USTR)代表がそれぞれ参加する予定。また、中国からは経済政策を担当する何副首相が出席する見通し。トランプ大統領は5月末には「中国は米国との合意に違反した」と発言していたが、6月に入ると習近平国家主席のことを「これまでも、そしてこれからも好き」と発言し、トランプ氏から周主席に電話会談を申し込むなど、TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもびびって退く)と批判される通りの動きになっている。
トランプ政権にとっては、ロシアとのウクライナ和平交渉を進め、ウクライナに埋蔵されているレアアース(希土類)を獲得というシナリオがあったが、プーチン露大統領が和平交渉には全く興味を示さないことで、トランプ政権の目論見がはずれたようだ。よって、中国によるレアアースの輸出規制の問題解決を早急に進めようというトランプ政権の弱腰姿勢が垣間見られ、閣僚級会談終了後には何某らかの前向きな報道が伝わる可能性が高く、ドルの支えになるか。
本来であれば、本日は先週末に行われた(赤沢経済再生相とベッセント財務長官及びラトニック商務長官の)日米閣僚級会談が市場の注目点になるはずだった。しかし、「合意の一致点は見いだせていない」と赤沢経済再生相が述べていることもあり、市場の注目度がやや低下している。今週15-17日に行われるカナダ・カナナスキスでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)前後に、石破首相はトランプ米大統領との首脳会談を希望し、首脳会談で関税についての合意の実現を目指しているとも報じられている。ただ、米国にとって日本との交渉の重要度の低下は否めず、日本の参議院選などを考慮すると、7月9日の相互関税賦課開始まで交渉が進まないリスクには備えおきたい。
また、本日はドル買い材料だけではなく、ドル売り材料もあることには注意が必要になる。先週6日には米中閣僚級会談以外にも、トランプ大統領は米連邦準備理事会(FRB)の次期議長について早期指名することを示唆した。ベッセント米財務長官も昨年末に同様の発言をし、批判を浴びて発言を撤回した経緯がある。トランプ政権の経済問題を担う二人が、FRBの独立性を軽視している考えを持っていることは明らかで、米債券・米株売りからのドル売りにつながるトリプル安の再燃には要警戒になる。
他にも、移民抗議行動に対応するためカリフォルニア州にトランプ大統領が州兵を派遣したことにも注目。ニューサム・カリフォルニア知事の反対を押し切って派遣に踏み切ったが、抗議活動がカリフォルニア州から他州へ拡大することもあり得、経済活動の停滞に結び付くリスクには警戒したい。
なお、本日のアジア時間での経済指標では本邦から1-3月期の実質国内総生産(GDP)改定値などの複数指標、中国からは5月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、貿易収支などが発表される。通常は市場の反応が見られる指標だが、政治相場になりつつあることで、本日に限ればこれらの指標での反応は限定的になる可能性が高そうだ。
(松井)
本日の東京時間でのドル円は、先週後半のドルの買い戻しの流れが続き、底堅さを維持するか。特に、本日行われる米中閣僚級協議に対する期待感がドル円を支えることになりそうだ。
本日ロンドンで行われる予定となっている米中閣僚級協議は、ベッセント米財務長官をはじめラトニック米商務長官、グリア通商代表部(USTR)代表がそれぞれ参加する予定。また、中国からは経済政策を担当する何副首相が出席する見通し。トランプ大統領は5月末には「中国は米国との合意に違反した」と発言していたが、6月に入ると習近平国家主席のことを「これまでも、そしてこれからも好き」と発言し、トランプ氏から周主席に電話会談を申し込むなど、TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもびびって退く)と批判される通りの動きになっている。
トランプ政権にとっては、ロシアとのウクライナ和平交渉を進め、ウクライナに埋蔵されているレアアース(希土類)を獲得というシナリオがあったが、プーチン露大統領が和平交渉には全く興味を示さないことで、トランプ政権の目論見がはずれたようだ。よって、中国によるレアアースの輸出規制の問題解決を早急に進めようというトランプ政権の弱腰姿勢が垣間見られ、閣僚級会談終了後には何某らかの前向きな報道が伝わる可能性が高く、ドルの支えになるか。
本来であれば、本日は先週末に行われた(赤沢経済再生相とベッセント財務長官及びラトニック商務長官の)日米閣僚級会談が市場の注目点になるはずだった。しかし、「合意の一致点は見いだせていない」と赤沢経済再生相が述べていることもあり、市場の注目度がやや低下している。今週15-17日に行われるカナダ・カナナスキスでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)前後に、石破首相はトランプ米大統領との首脳会談を希望し、首脳会談で関税についての合意の実現を目指しているとも報じられている。ただ、米国にとって日本との交渉の重要度の低下は否めず、日本の参議院選などを考慮すると、7月9日の相互関税賦課開始まで交渉が進まないリスクには備えおきたい。
また、本日はドル買い材料だけではなく、ドル売り材料もあることには注意が必要になる。先週6日には米中閣僚級会談以外にも、トランプ大統領は米連邦準備理事会(FRB)の次期議長について早期指名することを示唆した。ベッセント米財務長官も昨年末に同様の発言をし、批判を浴びて発言を撤回した経緯がある。トランプ政権の経済問題を担う二人が、FRBの独立性を軽視している考えを持っていることは明らかで、米債券・米株売りからのドル売りにつながるトリプル安の再燃には要警戒になる。
他にも、移民抗議行動に対応するためカリフォルニア州にトランプ大統領が州兵を派遣したことにも注目。ニューサム・カリフォルニア知事の反対を押し切って派遣に踏み切ったが、抗議活動がカリフォルニア州から他州へ拡大することもあり得、経済活動の停滞に結び付くリスクには警戒したい。
なお、本日のアジア時間での経済指標では本邦から1-3月期の実質国内総生産(GDP)改定値などの複数指標、中国からは5月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、貿易収支などが発表される。通常は市場の反応が見られる指標だが、政治相場になりつつあることで、本日に限ればこれらの指標での反応は限定的になる可能性が高そうだ。
(松井)