東京為替見通し=米中交渉期待感から失望感への変化に警戒、レアアース合意は限定期間
昨日の海外市場でドル円は、米中貿易摩擦の緩和期待から円売り・ドル買いが先行し145.46円まで上昇した。ただ、5月米消費者物価指数(CPI)がヘッドライン、コアともに市場予想より弱い結果だったことで144.33円まで弱含んだ。ユーロドルは1.1500ドルまで強含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、上値が限られそうだ。上値を抑える要因は、昨日発表された米インフレ指標の低下と米中閣僚級会談が失望感へと変わる可能性が挙げられる。
昨日発表された5月米消費者物価指数(CPI)がヘッドライン、コアともに市場予想を下振れたことは、短期的にドルの上値を抑える要因にはなる。ただ、本日は同月の卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、過度にドルベアになるのも難しいかもしれない。また、米小売最大手ウォルマートのレイニー最高財務責任者(CFO)は、輸入品の関税の影響で早ければ5月、確実に6月には店頭で価格が上昇する可能性を示唆している。インフレ上昇が数値として出てくるのは6月の指標以後になりそうだ。
2日間にわたり英ロンドンで行われた米中閣僚級会談は、「ジュネーブ合意」履行の枠組みで一致した。この発言を受けて市場は一時リスク選好の動きを見せたが、一部ではこの会談の成果が不透明なことを指摘している。ラトニック米商務長官も報道機関のロンドン合意条件に関する詳細についてコメントを応じていない。先進国首脳会議(G7サミット)を前に、トランプ政権が大きな進展がないにもかかわらず合意をしたことを強調したとも言えそうだ。
そもそも「ジュネーブ合意」自体が、米国の対中関税は145%から30%に、中国は125%から10%に90日間下げる決定以外は、玉虫色の内容となっていた。昨日トランプ米大統領は上述の30%関税に、特定製品への25%関税を含めて中国に対する米国の関税は合計55%になるとSNSに投稿したが、この関税率もホワイトハウス当局者は後に新しいものではないことを認めている。
また、トランプ大統領が「貿易協定の一環として中国が米国にレアアースを前払いで供給する」とも述べたが、この条件は6カ月間の暫定的なライセンスのみを発行することに同意したと米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。この条件では、中国は6カ月ごとに特定のライセンス発行の決定を再検討できるようになり、米国企業のサプライチェーンに不確実性が生じることになる。トランプ政権の発表だけでは合意したものが誇張されていることや、都合よく利用していることもあり、中国側の発表や報道を今後はより注意して目を通しておく必要があるだろう。2大経済大国がお互い交渉を続けること自体はマイナスではないが、ロンドン合意の内容を精査すると期待感から失望感へと変化するリスクには警戒しておきたい。
なお、中国は米国との交渉を進めつつも、昨日アフリカ53カ国と中国アフリカ協力フォーラムの閣僚会議を開き、中国がアフリカ諸国から輸入する製品の関税をゼロにすると発表している。トランプ政権が世界中を敵に回している状況下で、中国政府は着々と輸出入のパートナー拡大の成果をあげている。中国が通商問題で米国に対して妥協はせず、いずれは「USパッシング」の政策を進める可能性も高まりそうだ。
本日は本邦からは4-6月期法人企業景気予測調査、対外対内証券売買契約等の状況などが発表される。ここ最近は本邦の経済指標での市場の反応は鈍いことで、引き続き米中の関税に関する報道を警戒する一日になりそうだ。
(松井)
本日の東京時間でのドル円は、上値が限られそうだ。上値を抑える要因は、昨日発表された米インフレ指標の低下と米中閣僚級会談が失望感へと変わる可能性が挙げられる。
昨日発表された5月米消費者物価指数(CPI)がヘッドライン、コアともに市場予想を下振れたことは、短期的にドルの上値を抑える要因にはなる。ただ、本日は同月の卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、過度にドルベアになるのも難しいかもしれない。また、米小売最大手ウォルマートのレイニー最高財務責任者(CFO)は、輸入品の関税の影響で早ければ5月、確実に6月には店頭で価格が上昇する可能性を示唆している。インフレ上昇が数値として出てくるのは6月の指標以後になりそうだ。
2日間にわたり英ロンドンで行われた米中閣僚級会談は、「ジュネーブ合意」履行の枠組みで一致した。この発言を受けて市場は一時リスク選好の動きを見せたが、一部ではこの会談の成果が不透明なことを指摘している。ラトニック米商務長官も報道機関のロンドン合意条件に関する詳細についてコメントを応じていない。先進国首脳会議(G7サミット)を前に、トランプ政権が大きな進展がないにもかかわらず合意をしたことを強調したとも言えそうだ。
そもそも「ジュネーブ合意」自体が、米国の対中関税は145%から30%に、中国は125%から10%に90日間下げる決定以外は、玉虫色の内容となっていた。昨日トランプ米大統領は上述の30%関税に、特定製品への25%関税を含めて中国に対する米国の関税は合計55%になるとSNSに投稿したが、この関税率もホワイトハウス当局者は後に新しいものではないことを認めている。
また、トランプ大統領が「貿易協定の一環として中国が米国にレアアースを前払いで供給する」とも述べたが、この条件は6カ月間の暫定的なライセンスのみを発行することに同意したと米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。この条件では、中国は6カ月ごとに特定のライセンス発行の決定を再検討できるようになり、米国企業のサプライチェーンに不確実性が生じることになる。トランプ政権の発表だけでは合意したものが誇張されていることや、都合よく利用していることもあり、中国側の発表や報道を今後はより注意して目を通しておく必要があるだろう。2大経済大国がお互い交渉を続けること自体はマイナスではないが、ロンドン合意の内容を精査すると期待感から失望感へと変化するリスクには警戒しておきたい。
なお、中国は米国との交渉を進めつつも、昨日アフリカ53カ国と中国アフリカ協力フォーラムの閣僚会議を開き、中国がアフリカ諸国から輸入する製品の関税をゼロにすると発表している。トランプ政権が世界中を敵に回している状況下で、中国政府は着々と輸出入のパートナー拡大の成果をあげている。中国が通商問題で米国に対して妥協はせず、いずれは「USパッシング」の政策を進める可能性も高まりそうだ。
本日は本邦からは4-6月期法人企業景気予測調査、対外対内証券売買契約等の状況などが発表される。ここ最近は本邦の経済指標での市場の反応は鈍いことで、引き続き米中の関税に関する報道を警戒する一日になりそうだ。
(松井)