東京為替見通し=ドル円、中東情勢関連報道に警戒しながら植田日銀総裁の会見待ちか

 16日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、「イランはイスラエルとの戦闘緩和にオープン」との報道で143.65円まで下落後、「イスラエルは再びイランを攻撃」との報道で144.88円まで反発した。ユーロドルは「イランは敵対行為を緩和するための協議をイスラエルと米国に求めている」との報道で1.1615ドルまで上昇後、1.1555ドル付近まで押し戻された。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、中東情勢関連のヘッドラインに警戒しながら、日銀金融政策決定会合の結果を見極め、15時30分からの植田日銀総裁の記者会見を待つ展開となる。

 中東情勢に関しては、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、イランがイスラエルとの敵対行為を緩和したい意向を示しており、米国がイスラエルの軍事行動に加わらない限り、米国との核協議を再開する用意がある、と報じたことで、緊張がやや緩和している。
 トランプ米大統領も、イランがイスラエルとの対立緩和について話し合いを望んでいる、と述べており、本日も関連ヘッドラインを注視していくことになる。
 昨日は、「イランはイスラエルとの戦闘緩和にオープン」「イランは敵対行為を緩和するための協議をイスラエルと米国に求めている」「イランはイスラエルへの大規模攻撃を準備」「イスラエルは再びイランを攻撃」などの報道が飛び交っていた。

 昨日からカナダで開催されているG7首脳会議では、イスラエルとイランの紛争の緊張緩和を求める共同声明の草案が作成されており、イスラエルに自衛権があるとの記述がある、と報じられている。
 しかし、米政府当局者によると、トランプ米大統領はこの声明に署名しない、とのことで、通商問題と同様に米国対G6諸国の構図が浮き彫りになっている。

 中東情勢のリスクシナリオは、第5次中東戦争まで戦火が拡大して、イランがホルムズ海峡を封鎖して原油価格が高騰する場合となる。ホルムズ海峡では、毎日世界の石油消費の約21%に相当する約2000万バレルの原油が通過し、中国、インド、日本、韓国などのアジア諸国はエネルギー供給の80%以上を依存している。
 NY原油先物は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて6月に122ドルまで上昇していたが、2022年12月の日本の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%、米国のCPIは、6月に前年比+9.1%まで上昇していた。

 本日までの日銀金融政策決定会合や本日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)では、原油価格高騰によるインフレ再燃に対する対応策に注目しておきたい。

 本日までの日銀金融政策決定会合では、トランプ関税の不確実性や中東情勢の不透明性から政策金利(※0.50%)の維持が見込まれているが、植田日銀総裁の会見では、中東情勢の緊迫化を受けて原油価格が上昇基調を辿って高止まりするリスクシナリオへの対応策などに注目しておきたい。

 日銀金融政策決定会合での議題は、2025年4月以降の超長期債利回り急上昇により世界の債券市場の混乱の震源地となっている日本の長期債市場のボラティリティの緩和、すなわち、2026年4月以降の国債買い入れの減額ペースが緩む可能性が報じられていた。

 米財務省が先日公表した「外国為替報告書」では、国債買い入れの減額は量的金融引締政策(QT)と見なされて、円高要因と指摘されていた。
 現状の4000億円の減額から2000億円程度へと減額幅が縮められた場合、円安要因となるため、植田日銀総裁の見解に注目しておきたい。



(山下)
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