欧州マーケットダイジェスト・23日 英減税と借入増額で「トリプル安」

(23日終値:24日3時時点)
ドル・円相場:1ドル=143.37円(23日15時時点比△1.22円)
ユーロ・円相場:1ユーロ=138.94円(▲0.78円)
ユーロ・ドル相場:1ユーロ=0.9691ドル(▲0.0138ドル)
FTSE100種総合株価指数:7018.60(前営業日比▲140.92)
ドイツ株式指数(DAX):12284.19(▲247.44)
10年物英国債利回り:3.828%(△0.333%)
10年物独国債利回り:2.024%(△0.059%)

※△はプラス、▲はマイナスを表す。

(主な欧州経済指標)        <発表値>     <前回発表値>
9月仏製造業PMI速報値         47.8        50.6
9月仏サービス部門PMI速報値      53.0        51.2
9月独製造業PMI速報値         48.3        49.1
9月独サービス部門PMI速報値      45.4        47.7
9月ユーロ圏製造業PMI速報値      48.5        49.6
9月ユーロ圏サービス部門PMI速報値   48.9        49.8
9月英製造業PMI速報値         48.5        47.3
9月英サービス部門PMI速報値      49.2        50.9

※改は改定値を表す。▲はマイナス。

(各市場の動き)
・ポンドは全面安。ポンドドルは一時1.0863ドルと1985年以来37年ぶりの安値を更新したほか、ユーロポンドは0.8935ポンドと昨年1月以来のポンド安水準を付けた。ポンド円も一時155.66円まで売り込まれた。トラス英政権が打ち出した1972年以来の大規模な減税策と国債増発計画をきっかけに財政悪化懸念が強まると、株安・債券安・通貨安の「トリプル安」となった。市場では「今回発表された一連の措置に伴う費用は英国の財政では賄いきれず、通貨危機を招く恐れがある」との懸念が広がっている。
 なお、英10年債利回りは一時3.848%前後と前日比で35bpを超える急騰となり、2011年2月以来の高水準を付けた。英5年債利回りは4.133%前後まで急騰し、1日で57bpの上昇幅となった。

・ユーロドルは軟調。高インフレの長期化と金融引き締めによるユーロ圏景気の後退が懸念される中、英国が発表した大規模な減税と大幅な借り入れ増額で金融市場に動揺が広がった。世界同時株安の様相が一段と強まる中、リスク・オフのドル買いも重なり一時0.9681ドルと02年9月以来20年ぶりの安値を更新した。
 主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時113.07と02年5月以来の高値を付けた。

・ドル円は底堅い動き。世界で金利の上昇圧力が止まらず景気懸念が強まる中、欧米株価が軟調に推移。主要通貨に対してリスク・オフのドル買いが進むと、円に対してもドル買いが先行した。9月米製造業・サービス部門PMI速報値が予想を上回ったことも相場の支援材料となり、一時143.46円と日通し高値を付けた。
 ただ、政府・日銀による円買い介入への警戒感から、瞬間的に1円程度急落する場面もあった。19時前には142.32円付近、20時過ぎには142.38円付近まで、いずれも143円台前半から一気に下落し、すぐに値を戻した。

・ユーロ円はさえない。ユーロドルの下落につれた売りが出て一時138.79円と日通し安値を付けた。欧米株安やポンド円中心にクロス円が下落した影響も受けた。

・ロンドン株式相場は大幅に続落し、6月17日以来約3カ月ぶりの安値で取引を終えた。インフレの長期化で主要中銀が積極的な金融引き締めを当面継続するとの見方が強まる中、景気への懸念から株売りが先行。トラス政権が大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出すと、財政の悪化懸念が強まり、英国債利回りが急騰。株式相場をさらに押し下げた。

・フランクフルト株式相場は大幅に続落し、昨年11月3日以来の安値となった。主要中銀の大幅な金融引き締めが世界景気を冷やすとの警戒感から、この日も売りが続いた。本日の米国株や欧州各国の株式相場も下落し、世界同時株安の様相が強まった。なお、フランスの株価指数は2.28%安、スペインは2.46%安、イタリアは3.36%安となった。

・欧州債券相場は下落。トラス英政権が大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出すと、財政の悪化懸念が強まり英国債相場が暴落(利回りは急騰)した。

(中村)
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