週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、荒い値動き続くか
◆ポンド、荒い値動き続きそう、トラス政権への不信感は拭えず
◆英国、中期財政計画への注目高まる、中銀の長期国債購入は14日まで
◆加ドル、原油相場やリスクセンチメントに振らされる展開
予想レンジ
ポンド円 158.00-166.00円
加ドル円 103.50-107.50円
10月10日週の展望
ポンドは荒い値動きが続く可能性が高い。英国のトラス新政権への不信感は拭えず、財政悪化への懸念もくすぶったままのなか、同国債券相場の動向に振らされる展開となりそうだ。
先月下旬にポンドは英国債とともに暴落。トラス新政権による「成長計画2022」が財源なき大規模な減税案を柱としており、それを嫌気する動きだった。しかし、大幅下落の反動も大きく、月末から月初にかけては大幅な買い戻しとなった。オプション市場では「ポンド安を見込むポジションが過去最大まで膨れ上がった」との報道もあるように、市場はあまりにも弱気に傾き過ぎたようだ。
ただ、依然としてトラス首相とクワーテング財務相が主導する国債増発に頼る財政政策を好意的な目で見る向きは多くない。英与党・保守党の支持率が急落するなかで開かれた党大会では、新政権への不信感をあらわにする声が目立った。批判を抑えるため、クワーテング財務相は金持ち優遇策として評判の悪かった「所得税の最高税率を45%から40%に引き下げる案」の撤回を発表。しかしながら、約50年ぶりの大型減税案として当初示された450億ポンドのうち、引き下げ案は20億ポンドに過ぎず、市場が危惧する財源問題の解決には程遠い。
なお、市場安定化のため導入された英中銀による20年超の国債無制限購入は14日まで。年金基金の破城を防ぐことが主な狙いと見られる買い入れについて、中銀は「利回りに上限を設けることが目的ではない」と指摘。そのため、債券売り圧力は期間終了後への不透明感もあり高まったまま。そういった意味でも、発表が月内に前倒しされた中期財政計画の内容が注目となる。党大会で、クワーテング財務相は債務削減計画の詳細を「間もなく明らかにする」と述べている。英経済指標では、8月国内総生産(GDP)や鉱工業生産の発表が予定されている。
加ドルは原油相場の動向や市場のリスクセンチメントの強弱を眺めながらの展開か。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国でつくるOPEC+は5日の会合で、11月に日量200万バレル減産することで合意。北半球がエネルギー需要の高まる冬を控えたなかでの決定は原油価格の下支え要因となり、加ドルにとってもポジティブだろう。また、資源国通貨として市場のリスクセンチメントにも敏感に上下しており、国内からの材料が乏しいなかで同様な動きは続きそうだ。
10月3日週の回顧
ポンドは買い戻しが先行。クワーテング英財務相が所得税の最高税率引き下げ案の撤回を発表したことや、中期財政計画の発表前倒しが好感された。対円では165円後半と週初の下値から約5円の上げ、対ドルでは1.11ドル割れから1.15ドル手前まで上昇した。ただ、英国債への売りが強まると、週後半には上げ幅を大きく縮めた。
加ドルも買いが先行した。月初の米株急騰やOPEC+の大幅減産を受けて原油先物が大幅に上昇したことが支えに。対円では一時106円後半まで上昇し、対ドルでも1.35加ドル手前まで加ドル高に振れる場面があった。ただ、週末にかけては、米金利上昇を背景に対ドルを中心に上昇幅を縮小している。(了)
(小針)
◆英国、中期財政計画への注目高まる、中銀の長期国債購入は14日まで
◆加ドル、原油相場やリスクセンチメントに振らされる展開
予想レンジ
ポンド円 158.00-166.00円
加ドル円 103.50-107.50円
10月10日週の展望
ポンドは荒い値動きが続く可能性が高い。英国のトラス新政権への不信感は拭えず、財政悪化への懸念もくすぶったままのなか、同国債券相場の動向に振らされる展開となりそうだ。
先月下旬にポンドは英国債とともに暴落。トラス新政権による「成長計画2022」が財源なき大規模な減税案を柱としており、それを嫌気する動きだった。しかし、大幅下落の反動も大きく、月末から月初にかけては大幅な買い戻しとなった。オプション市場では「ポンド安を見込むポジションが過去最大まで膨れ上がった」との報道もあるように、市場はあまりにも弱気に傾き過ぎたようだ。
ただ、依然としてトラス首相とクワーテング財務相が主導する国債増発に頼る財政政策を好意的な目で見る向きは多くない。英与党・保守党の支持率が急落するなかで開かれた党大会では、新政権への不信感をあらわにする声が目立った。批判を抑えるため、クワーテング財務相は金持ち優遇策として評判の悪かった「所得税の最高税率を45%から40%に引き下げる案」の撤回を発表。しかしながら、約50年ぶりの大型減税案として当初示された450億ポンドのうち、引き下げ案は20億ポンドに過ぎず、市場が危惧する財源問題の解決には程遠い。
なお、市場安定化のため導入された英中銀による20年超の国債無制限購入は14日まで。年金基金の破城を防ぐことが主な狙いと見られる買い入れについて、中銀は「利回りに上限を設けることが目的ではない」と指摘。そのため、債券売り圧力は期間終了後への不透明感もあり高まったまま。そういった意味でも、発表が月内に前倒しされた中期財政計画の内容が注目となる。党大会で、クワーテング財務相は債務削減計画の詳細を「間もなく明らかにする」と述べている。英経済指標では、8月国内総生産(GDP)や鉱工業生産の発表が予定されている。
加ドルは原油相場の動向や市場のリスクセンチメントの強弱を眺めながらの展開か。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国でつくるOPEC+は5日の会合で、11月に日量200万バレル減産することで合意。北半球がエネルギー需要の高まる冬を控えたなかでの決定は原油価格の下支え要因となり、加ドルにとってもポジティブだろう。また、資源国通貨として市場のリスクセンチメントにも敏感に上下しており、国内からの材料が乏しいなかで同様な動きは続きそうだ。
10月3日週の回顧
ポンドは買い戻しが先行。クワーテング英財務相が所得税の最高税率引き下げ案の撤回を発表したことや、中期財政計画の発表前倒しが好感された。対円では165円後半と週初の下値から約5円の上げ、対ドルでは1.11ドル割れから1.15ドル手前まで上昇した。ただ、英国債への売りが強まると、週後半には上げ幅を大きく縮めた。
加ドルも買いが先行した。月初の米株急騰やOPEC+の大幅減産を受けて原油先物が大幅に上昇したことが支えに。対円では一時106円後半まで上昇し、対ドルでも1.35加ドル手前まで加ドル高に振れる場面があった。ただ、週末にかけては、米金利上昇を背景に対ドルを中心に上昇幅を縮小している。(了)
(小針)