東京為替見通し=明日の東京休場もあり円買い介入の可能性は高いまま

 海外市場でドル円は米長期金利の低下に伴い150.66円まで弱含んだ。10月ADP全米雇用報告や10月米ISM製造業景気指数が予想より弱い結果だったことや、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果やパウエルFRB議長の会見がタカ派ではなかったことが影響した。ユーロドルはユーロクロスの売りで1.0517ドルまで売られたが、米金利低下で1.0576ドル付近まで持ち直した。

 本日のドル円は、引き続き円買い介入の警戒高いなかで神経質な相場展開となりそうだ。
 
 昨日に円売りの勢いが弱まったのは、米雇用指標の結果とパウエルFRB議長が「(利上げ)サイクルの終わりに近づいている」などと発言し、米金利が低下したことが主な背景。決して円安基調が変わったというわけではない。
 むしろ、昨日の登庁時に神田財務官が「(為替介入)スタンバイです」と述べたことをで市場には介入期待が高まり、円買いポジションが拡大したのではないか。31日のドル高値(151.72円)や昨年10月に1990年以来に付けた高値(151.95円)を上抜けた場合には、円ロングのストップロスがトリガーされ、更にドル買いが進むリスクもある。
 仮に1990年以来のドル高・円安水準までドル円が上昇した場合、本邦当局による介入の発射地点が高くなり、介入を実施しても押し下げ幅が限られる危険性もあるだろう。当局者の口先介入が持ち高を偏らせ、介入がない場合は更に円売りを加速させる悪循環になりつつある。

 ただし、本日も引き続き介入警戒感が高いことは変わらない。為替介入の可能性が高い理由は複数ある。
 1つ目は、明日3日は東京市場が文化の日で祝日休場ということ。過去に東京が祝日に介入を行ったことはあり、可能性がある水準では邦銀・外銀問わず休日出勤で介入を実行する体制を整えている。しかしながら間隔が空いたあとの介入は、市場へのメッセージを伝える側面もあるため、東京不在時の介入の可能性は若干低くなる。為替ディーラーは休日出勤をするものの、それ以外の部署にまたがって煩雑な事務作業等もあることで休日の大規模介入を行うのは難しいか。
 また、明日は10月の米雇用統計の発表も控えており、仮に強い結果となった場合には米金利上昇・ドル買いの勢いが増し、上述の介入の発射地点が高くなり、介入の効果が限定されることにもなる。

 2つ目の要因は政治的なもの。本日閣議決定する経済対策は、現時点で報道されている限り全く評価されておらず、岸田政権に対する支持率の更なる低下が予想されている。経済番組だけではなく、一般のニュース報道ですら円安による景気悪化が昨日も取り上げられていた。経済対策では補えない支持率の凋落をカバーする意味で、円安阻止という手も加えてくる可能性もあるか。

 本日は他のアジア・オセアニア諸国からも9月の豪貿易収支以外は注目すべき経済指標等の発表もないことで、東京時間の市場動向は円の動きが左右することになるだろう。


(松井)
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