東京為替見通し=ドル円、ウォーシュ講演まで様子見 日銀副総裁発言は材料不足か

 昨日の海外市場でドル円は米インフレの高止まりが鮮明となる中、いったんは158.93円付近まで下押ししたものの、そのあとは米長期金利の上昇に伴って全般ドル買いが活発化し一時159.45円と日通し高値を更新した。ユーロドルは一時1.1642ドルまで値を下げる場面もあったが、値動きは限られた。

 本日の東京市場のドル円は、引き続き米債券市場の動向に左右される相場展開となるだろう。ただ、市場は明日28日に米カンザスシティー連銀主催のシンポジウム(通称:ジャクソンホール会議)でウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長が講演を行うことから、それまでは様子見姿勢が強まる可能性が高そうだ。

 昨日発表された7月の個人消費支出(PCE)デフレーターはほぼ市場予想通りとなったこともあり、値動きは限られた。また、同月の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)に対する市場の反応も、一瞬は大きく動くものの、トレンドを形成するには至らなかった。こうした指標への反応が鈍くなっている背景には、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でウォーシュ議長が、遅れて発表される政府の経済統計(CPIや雇用統計など)よりも、金融市場のシグナル(国債金利のイールドカーブ、為替レート、商品価格など)や構造変化(AI導入による生産性向上や供給網の変化)を先取りして政策判断すべきだと主張していることも影響している。

 ただ、このような政策判断への傾斜が逆に市場の混乱を招き、財政問題を抱える中でFRBへの信頼低下につながり、米長期・超長期金利の上昇を招いた面もある。ベッセント米財務長官をはじめ、米長期金利の上昇への対応に追われるなか、ジャクソンホールでウォーシュ議長がこのまま「ゼロコミュニケーション」と受け止められるような姿勢を続ければ、米金利の上昇に歯止めがかからなくなる恐れがある。そのため、明日は一定の発言を行うことが期待されており、その内容を確認するまでは債券・為替市場の動きも鈍くなりそうだ。

 もっとも、ベッセント米財務長官は8月20日のインタビューなどで、「財政健全化(Fiscal Consolidation)に焦点を当てたイニシアチブを今週末から来週初め(8月下旬)にかけて発表する」と述べていたにもかかわらず、現時点では新たな財政健全化策の具体的な内容は明らかになっていない。市場では、ベッセント長官もウォーシュ議長の発言を待っているのか、それともジャクソンホール会議を前に米債の買いを促す新たな政策を打ち出すのか注目が集まる。本日は大きなイベントが予定されていないだけに、財政健全化策など市場を動かす発表が突然出てくる可能性には警戒しておきたい。

 本日は日本時間10時30分に氷見野良三日銀副総裁が埼玉県金融経済懇談会で講演を行う。市場では9月の利上げに向けた地ならしを行うとの見方もある。ただ、市場ではすでに9月の利上げが濃厚との予想が広がっていることから、仮によりタカ派的な発言が伝わったとしても、円買いの反応は限られるだろう。日銀の利上げ幅や利上げペースに大きな変更がない限り、高市政権の無責任な財政政策や米国への投資を促す政策が続くなかで、円安地合いが急変するとは考えにくい。


(松井)
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