東京為替見通し=ドル円の上値は限定的か、米10年債利回りは低下基調を継続

 海外市場でドル円は、欧州序盤に132.51円まで下げた。しかし、6月米個人消費支出(PCE)や同PCEコアデフレーターなどが予想を上回る結果となったことが分かると買い戻しが加速。一時134.59円付近まで買い上げられた。一方、東京朝方の高値134.68円には届かず、一巡後は米10年債利回りが一転低下に転じたため戻り売りの展開へ。目立った反発もないまま、取引終了間際には133.21円近辺まで押された。ユーロドルは、米中長期金利の上昇や良好な米インフレ指標を受けて1.0146ドルと日通し安値を更新した。しかしながらその後、米金利が一転低下したため1.0220ドル台まで切り返した。

 本日の東京時間のドル円はボラタイルな動きを繰り返すだろうが、上値は限られるか。先週末に発表された米個人消費支出(PCE)デフレーターは、米連邦準備理事会(FRB)が最も注目しているインフレ指標。その6月分が前年比で40年半ぶりの強い結果となったのにもかかわらず、米10年債利回りは前日比で低下して引けている。これまでの過度の米金利上昇期待からの巻き戻しが続いていることが、ドル円の上値を抑えることになりそうだ。

 その反面、米2年債利回りは前日比で上昇して引けた。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利上げに慎重な姿勢を示して以来、逆イールドがわずかながら縮小傾向にある。

 米長期金利低下や逆イールド縮小傾向もあり、米株も3日続伸。7月はS&P500が2020年11月以来となる約9.1%上昇し、ナスダック総合も約12.3%上昇と2020年4月以来の上げ幅を記録した。ウォールストリートの一部エコノミストの間では「今年のベア市場は終了(the 2022 bear market is over)」と発言をしているが、株高によるリスクオンが続いた場合には、ドル円もある程度の支えにはなるか。

 明日2日にメスター米クリーブランド連銀総裁、3日にブラード米セントルイス連銀総裁と、今年のFOMCの投票権を持っているメンバーの講演が予定されている。先週のパウエルFRB議長の会見以来、FRB関係者の発言が伝わっていないことで、両者がFRB議長と同様の見通しを示すのか、否かが注目される。

 本日、アジア時間の経済指標は限られ、7月のCaixin中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:51.5)が発表される程度。よほど、市場予想との乖離がない場合は市場が反応するのは難しそうだ。

 なお、本日は訪米している岸田首相が、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説を行う。通常は担当閣僚級が出席する会議だが、被爆地・広島県出身のため出席にこだわった模様。ただし、翌日には帰国予定なことや、バイデン米大統領が再びコロナの陽性が判明したこともあり、政治的な動きは見受けられないだろう。また、ペロシ米下院議会議長のアジア歴訪が本日シンガポールより開始される。台湾訪問については言及されていないが、あえて安全上の問題でスケジュールに取り入れていないとの報道もあることで、ペロシ氏のアジア歴訪は通常以上に注目が集まる。

(松井)
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