東京為替見通し=ドル円、パウエル議長のタカ派発言での0.75%利上げ観測で堅調推移か

8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、神田財務官による円安牽制で143.32円まで下落後、パウエルFRB議長がインフレ抑制のため強く行動することを改めて表明したことで144.44円付近まで反発した。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会が、0.75%の大幅利上げに踏み切り、今後数回の追加利上げを実施する方針を表明したことで1.0029ドルまで上昇した。しかし、ラガルドECB総裁が大幅利上げ継続に否定的な見解を示したことで0.9931ドルまで反落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、パウエルFRB議長が高金利政策継続を再表明し、20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅が0.75%となる確率が高まっていることで底堅い展開が予想される。
 ドル円は、145.00円に仕組債のノックアウトトリガーが控えている模様で、買い仕掛けと防戦売りの攻防戦に警戒しておきたい。
 昨日は、6月以来の三者会合(財務省・日銀・金融庁)が開催され、神田財務官は「最近の円安進行は明らかに過度な変動であり、政府・日銀は極めて憂慮している。あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」と円安を牽制した。しかし、円安の主要な要因である日銀の大規模金融緩和が維持される中で効果的な円安阻止の手段は限られるとの見方から、円安抑制とはならなかった。

 昨日、パウエルFRB議長は、ジャクソンホール会合での講演と同様に「インフレ抑制の任務が完了するまで根気強く続けていく」と述べ、金融政策正常化路線を続けていくことを表明した。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日のFOMCでの0.50%の利上げ確率は14.0%、0.75%の利上げ確率は86.0%まで上昇している。ウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者は、今年2回のFOMCでの利上げ幅を的確に予想していたが、先日も、「20-21日のFOMCでは0.75%の利上げを決める見通しだ」と報じており、3回目の的確な予想となるのかもしれない。

 10時30分に発表される8月中国消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.8%と予想されており、7月の前年比+2.7%を上回ることが見込まれている。8月中国生産者物価指数(PPI)は、前年比+3.1%と予想されており、7月の前年比+4.2%より伸び率が低下すると見込まれている。
 習近平政権は、7月末に開催した会議において「雇用・物価の安定」を重視するという方針を決定しており、中国人民銀行も物価や為替の安定を重視するという金融政策方針を示している。中国人民銀行は「ゼロコロナ」政策により減速感が強まっている国内景気を下支えするため、8月に最優遇貸出金利(LPR)や中期貸出制度(MLF)の1年物金利を引き下げ、9月になってからは金融機関の外貨預金準備率を引き下げた。
 本日発表される中国のインフレ率が「物価の安定」を示唆する数字ではなかった場合、10月16日から開催予定の第20回共産党大会に向けて、さらなる物価安定策が予想される。

(山下)
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