東京為替見通し=ドル円、明晩発表の7月米CPI控えて動きづらい展開か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが2.73%台まで低下したことを受けて一時134.36円まで下落、その後135.11円付近まで反発した。ユーロドルは米長期金利の低下に伴うドル売りで1.0222ドルまで上昇した。ユーロ円はドル円の下落につれた売りで137.07円まで弱含んだが、その後137.69円付近まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、明晩発表される米7月消費者物価指数控えて動きづらい展開が予想される。
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%の利上げ確率は63.5%、0.50%の利上げ確率は36.5%となっている。

 パウエルFRB議長は7月27日の会見で、具体的なフォワードガイダンスは示さずに、「今後の利上げについてはデータ次第であり、会合ごとに判断される」と説明した。
 9月20-21日のFOMCまでには重要な雇用・物価データが以下の通り5つある。
・7月雇用統計(8/5発表):0.75%の利上げを正当化
・7月消費者物価指数(CPI)(8/10発表):6月の+9.1%から+8.7%へ鈍化する見通し
・7月PCE総合価格指数(8/26)※米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視
・8月雇用統計(9/2)
・8月消費者物価指数(9/13)
 市場では、明日の7月米CPIが雇用統計のようなポジティブサプライズだった場合、1994年4月のような緊急FOMCが開催されて緊急利上げを決定する可能性が警戒されている。

 本邦のドル円の注文状況は、ドル売り・円買いオーダーが目立つ時期となっている。今週から、本邦輸出企業の大半が8月11日からお盆休みに入る模様で、今週のドル円の136円台から上には、ドル売りオーダーが置きっぱなしとなる。また、毎年恒例の8月15日の米国債償還・利払い日に向けて、本邦機関投資家からの円転のオーダーも上値を抑える要因となる。

 なお、8月2-3日のペロシ米下院議長の台湾訪問により、台湾を巡る地政学リスクへの警戒感が高まっている。現在、中国側は台湾周辺での軍事演習を行っているが、ロシアもウクライナ侵攻前には、国境付近で軍事演習を行っていた。
 11月に予定されている第20回中国共産党大会を軸にして、ロシア情報機関の連邦保安局(FSB)報告書では、習中国国家主席が第20回党大会を開催する前、台湾を武力で侵攻して、党大会で自身の主席3期目を順調に確定する、と報じられていた。しかし、この説は、2月のロシアのウクライナ侵攻により、可能性が低下したらしい。
 大会後との説は、トランプ政権時代の安全保障分野に精通した元政府関係者が「18カ月以内に中国の台湾侵攻が起こるかもしれない」と述べており、3期目を確定した後、2024年1月の台湾総統選挙や11月の米国大統領選挙前に侵攻する、というものである。


(山下)
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