週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、サミットと雇用統計に注目

◆豪ドル、米政府の強気の関税交渉によるリスクセンチメント悪化に警戒
◆豪ドル、雇用統計で利下げサイクル変更の可否を見極め
◆ZAR、ネガティブ要素も多いが高金利維持で底堅い展開

予想レンジ
豪ドル円 91.00-95.00円
南ア・ランド円 7.90-8.30円

6月16日週の展望
 豪ドルは、来週は神経質な動きになりそうだ。市場が注目する国外要因では15-17日にカナダで行われる主要7カ国首脳会議(G7サミット)。豪国内からは5月の雇用統計に注目が集まる。

 今週2日間にわたって行われた米中閣僚級貿易協議では、ジュネーブ合意履行の枠組みで一致し、半年間の限定だが米国は中国からのレアアース輸入の合意が報じられている。この会談を経て、レアアース獲得の見通しが立ったこともあり、トランプ米大統領が再び他国に対する関税交渉に強気の姿勢を見せていることが警戒されている。関税賦課の延長期限(90日間)の期日まで4週間を切っている中で、トランプ米大統領は11日には「2週間以内に一方的に関税率を設定する」と明言。サミットで交渉が進まなかった国に対しては高賦課関税を掛けるということでもあり、各国は米国との交渉進展を急ぐことになりそうだ。豪州はG7参加国ではなく、対米貿易赤字を計上していることで高賦課関税は予想されていない。ただ、他国に対して関税圧力が増すと、リスクセンチメント悪化で豪ドルは売られやすくなるだろう。

 豪州からは、来週は18日に5月ウエストパック景気先行指数、19日に5月雇用統計が発表予定。注目は雇用統計。4月は新規雇用者数が市場予想を上回ったが、雇用者増は「シグナルというよりノイズ」である可能性が強いとされている。インフレ率は一貫して低下し、民間部門の賃金上昇も鈍化していることを考えると、5月も雇用統計がよほど強くならない限りは、豪準備銀行(RBA)の利下げサイクルが変わらない可能性が高い。なお、ニュージーランド(NZ)からは18日に1-3月期の経常収支、19日に同月期の国内総生産(GDP)が発表される。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は引き続き堅調な動きが予想される。米国からの関税賦課や、冬季に向けての電力不足など様々な問題を抱える中でZARは堅調地合いを維持している。4月の製造業生産は前年比で-6.3%と、6カ月連続でマイナスになるなど南ア経済に対しての不安は拭いきれない。ただ、トランプ関税の影響で世界的に投機資金の向かう先が限られ、高金利を維持する可能性が高い南アに資金が流入していることが、引き続きZARの支えになりそうだ。なお、来週の南アからの経済指標は18日に5月消費者物価指数(CPI)、4月小売売上高が発表される。また、19日には南ア準備銀行(SARB)の金融安定化レビューが公開される。

6月9日週の回顧
 豪ドルは対ドルでは底堅いが、対円では上値が重かった。米中の関税交渉期待で対ドルでは一時年初来高値となる0.6546ドルまで強含んだ。ただ対円では、トランプ米大統領が「一方的に関税率を設定する」と発言したほか、イスラエルによるイラン攻撃でリスク回避の動きが強まると94円後半から92円前半まで押し戻された。ZARは対ドルでは年初来高値を更新。対円でも3月末の水準まで上昇したが週後半は上げ幅を吐き出した。中国がアフリカの53カ国に対して関税をゼロにすると発表したことが支えになったが、対円ではリスク回避の動きが重しになった。(了)
(執筆:6月13日、9:30)
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