東京為替見通し=ドル円、有事のドル買いで雲の上限145.55円上抜けか

 17日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、イスラエルとイランの軍事衝突が激化して「有事のドル買い」が優勢となり、145.38円まで上昇した。ユーロドルは、中東情勢の更なる緊迫化で「株安・原油高・ドル高」の様相が強まり、1.1475ドルまで下落した。ユーロ円は、米国株相場が軟調に推移し、リスク回避の円買い・ユーロ売りが優勢となり166.71円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、中東情勢緊迫化を受けた有事のドル買いでこれまで上値を抑えてきた一目均衡表・雲の上限145.55円を上抜ける可能性が高まりつつある。

 トランプ米大統領は、カナダで開催中のG7首脳会議を途中で切り上げてワシントンに戻り、ホワイトハウスのシチュエーション・ルーム(作戦司令室)で、イスラエルとイランの交戦で緊迫する中東情勢への対応のための国家安全保障会議(NSC)の会合を開催した。
 さらに、米軍空母「ニミッツ」が南シナ海から中東の方向へ西進していると報じられており、米軍がイスラエルとイランの軍事衝突に関与する可能性が高まっており、本日も関連ヘッドラインに警戒しておきたい。

 8時50分に発表される日本の5月貿易統計(通関ベース)は、季節調整前8965億円の赤字、季節調整済3590億円の赤字と予想されているが、対米貿易黒字額を確認し、トランプ米政権による相互関税率の算出をしておきたい。
 4月に発表された日本に対する相互関税率24%は、2024年の米国の対日貿易赤字(685億ドル)を日本からの輸入金額(1482億ドル)で割って算出されていた。日本の5月、そして1-5月の対米貿易黒字により相互関税の妥当性を確認しておきたい。

 ベッセント米財務長官は、4月にトランプ政権が各国と行う通商交渉について、日本が非常に迅速に名乗り出たことで、日本を優先する可能性が高いと述べていた。しかし、日本側の代表である赤沢経済再生相と米国側の代表であるベッセント米財務長官、ラトニック米商務長官、グリア通商代表部(USTR)代表による6回に及ぶ通商交渉、そしてG7首脳会議でのトランプ米大統領と石破首相との日米首脳会談でも、通商合意には至らず、石破政権の通商交渉戦術の失敗に終わった。

 明朝3時に発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利は、トランプ関税の不確実性(uncertainty)を理由に4.25-4.50%での据え置きが見込まれている。
 イスラエルとイランの軍事衝突での最悪のシナリオは、第5次中東戦争に拡大して、ホルムズ海峡(日量2000万バレル超の原油が通過)の封鎖などで、原油価格が100ドル超まで上昇する可能性である。
 NY原油先物は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて6月に122ドルまで上昇したが、2022年6月の米国の消費者物価指数(CPI)は前年比+9.1%まで上昇していた。
 FOMC参加者による「経済・金利見通し」、ドット・プロット(金利予測分布図)やパウエルFRB議長の記者会見でリスクシナリオへの言及に注目しておきたい。


(山下)
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