東京為替見通し=財務長官火消しもドル安継続か、加・EUに続き訪中の英国も脱米国化に

 昨日の海外市場でドル円は、しばらくは152円台半ばでのもみ合いが続いたが、ベッセント米財務長官が介入を否定したうえで、「米国は常に強いドル政策をとっている」と発言すると154.05円まで上値を伸ばした。ただ、FOMC結果公表後に米10年債利回りが上昇幅を縮小すると153.30円付近まで下押しした。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)当局者からユーロ相場への言及が相次ぐ中、ポジション調整目的の売りが先行し一時1.1896ドルまで弱含んだ。ただ、米長期金利が上昇幅を縮めると1.1953ドル付近まで下げ渋った。

 本日の東京時間のドル円も売り場探しは変わらないだろう。トランプ米大統領のドル安容認発言について、昨日はベッセント米財務長官が消火活動に走った。昨年もトランプ大統領の不用意な発言でトリプル安が進んだときも、財務長官を含め政権要人が否定するなど、同じことを繰り返している。ただ、市場の中では、トランプ大統領は長年、通商面でのドル安のメリットを公言しており、自国通貨のドルに対する価値を下げるために外国為替市場に介入する国々を公然と非難してきてもいる。一部ではトリプル安を避けることができれば、ドル安を支持するとの考えがあることがドルの重しになる。また、今回の発言をみても政権内での統一性が無く、大統領の暴走を止めることができないことを改めて露見したことも米政権の信認低下を進めている。なお、財務長官が為替介入を否定したが、市場参加者はだれも実弾介入を行ったとは捉えていないことでサプライズではない。

 一方で、依然として日本の財政拡大政策については、国債売り・円売り要因としては根強い。ただ、異例となる米国金融当局のレートチェックなどのうわさで、円売り意欲が後退している。衆議院選挙が終わるまでは高市政権は円安阻止を計るため、ドル円の本格的な買い戻しを期待するのは難しそうだ。

 米国の内政面でドルの重しになるのは、今月末で失効する米予算の一部が、土曜日の東部時間午前0時1分で失効し、部分的な政府機関が閉鎖に突入する可能性が濃厚になっていること。1兆2000億ドルを超えるこの法案は先週下院を通過し、9月30日までの会計年度の政府支出の大半を占める予定だった。しかし、ミネソタ州での移民税関捜査局(ICE)による一般人の殺害で、民主党はICEを管轄する国土安全保障省(DHS)をはじめとする多数の政府機関への予算措置を盛り込んだ下院可決法案に反対を表明している。昨日の両党間での話し合いも平行線をたどり出口は見えないままだ。また、議員たちが休暇でワシントンを離れているということが状況を複雑にし、たとえ妥協案が成立したとしても、議員たちはそれを承認するために再び下院に戻らなければならず、閉鎖解除には時間を要することになりそうだ。

 また、昨日からスターマー首相は英首相として8年ぶりに中国を訪問している。そして、本日は中国の習近平国家主席および李強首相と会談し、貿易、投資、国家安全保障について協議する予定。金融大手HSBC会長、航空機大手エアバスの法務顧問、ブリティッシュ・エアウェイズの最高商務責任者、アストラゼネカCEOなど、50を超える英国企業・機関の代表団を率いて訪中している。この訪中はグリーンランド問題などを含め、英国もトランプ政権の高圧的な政策を嫌気し、米国抜きの貿易圏に入ることを意味するのだろう。

 すでに1月中旬には、カナダのカーニー首相は訪中し、習近平・中国国家主席と両国間の関係改善推進や経済協力の強化で一致し、持続可能な戦略的パートナーシップを構築していこうとしている。欧州連合(EU)も27日には20年間にわたる交渉が続いていた、インドの間で自由貿易協定(FTA)を締結し、世界のGDPの21%を占める巨大経済圏を形成することになった。これまで友好国だったカナダ、EU、英国と続々と脱米国路線になることで、米国の国力低下は避けようがないだろう。


(松井)
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