東京為替見通し=協調介入も日銀利上げも空振り?1992年の「市場の勝利」を再現か
昨日の海外市場でドル円は、12日の7月米消費者物価指数(CPI)の発表を前に様子見ムードが広がり、徐々に値動きが鈍く159円前半でもみ合いだった。ユーロドルもNY時間の安値は1.1533ドル、高値は1.1548ドルで値幅は0.0015ドル程度と非常に小さかった。
本日の東京市場のドル円も、引き続き本邦為替当局による円買い介入の有無が最大の焦点となるだろう。
10日は、米国とイラン情勢の混迷化を嫌気して原油先物価格が上値を伸ばし、米金利もつれて水準を切り上げた。しかし、ユーロドルが米金利の動きにほとんど反応せず、狭いレンジでの取引に終始した一方、ドル円は157円台から一気に159円台まで円安が進んだ。円買い介入が観測された最終日の8月3日の水準からも、すでに大きく離れており、わずか1週間で介入効果が剥落しつつある。
ここまで円安基調が強い背景には、高市政権が財政健全化への責任を後退させた政策運営、具体的には「骨太の方針」から財政健全化目標を除外したことや、トランプ米大統領との合意に基づく対米投資など、円安を促す政策が根本にある。為替介入だけで円安の流れを反転させることが難しいのは、こうした円安要因が温存されたままだからだ。
市場が警戒しているのは、ゴールデンウイーク中の介入と同様、今回も1シリーズ(3営業日)の介入で手控えられた場合、むしろその反動で円安が加速する可能性である。IMM通貨先物の非商業(投機)部門の円ポジションは、7月28日の16万3412枚の円売りから、介入後には4万5473枚まで減少し、7割以上の円買い戻しが進んだ。ゴールデンウイーク中の介入と比較しても、今回は米国との協調介入だったこともあり、投機筋の円ポジション整理は大きく進んだ。
しかし、これは裏を返せば、介入によって円を買い戻した投資家が再び円を売り直す余地が大きいことを意味する。今回も介入が一過性に終われば、円売りポジションの再構築が進み、介入前以上の円安圧力につながる可能性がある。
さらに今回は、米国が協調しただけでなく、米国からの圧力を背景に9月の日銀利上げも促す形となった。通貨当局としては、異例ともいえる米国との協調介入と日銀の利上げを組み合わせれば、円安の流れを食い止められるとの判断があったのかもしれない。しかし、現状はその期待とは正反対に、介入効果が急速に巻き戻されている。
このまま円安に対して弱いメッセージしか発せられなければ、最悪の場合、市場と通貨当局の攻防が一段と激化する可能性もある。1992年にイングランド銀行が欧州為替相場メカニズム(ERM)防衛に失敗し、ポンドが市場の巨大な売り圧力に飲み込まれたように、当局の政策余地が市場に見透かされれば、為替介入そのものが円売りの格好の機会として利用されるリスクもある。そうなれば、円安を止めるための介入が、逆に市場の円売りを強めるという皮肉な展開にもなり得る。
なお、本日は本邦からマネーストックM2の発表が予定されている程度で、アジア・オセアニアを含め、市場を大きく動意づけるような主要経済指標の発表はない。ただ、米国では7月の消費者物価指数(CPI)が発表されるため、それまでは積極的な取引が手控えられ、ドル円も方向感の乏しい展開となる可能性がある。もっとも、159円台まで円安が進んだことで、東京市場では本邦通貨当局の動向を意識した神経質な値動きが続くだろう。
(松井)
本日の東京市場のドル円も、引き続き本邦為替当局による円買い介入の有無が最大の焦点となるだろう。
10日は、米国とイラン情勢の混迷化を嫌気して原油先物価格が上値を伸ばし、米金利もつれて水準を切り上げた。しかし、ユーロドルが米金利の動きにほとんど反応せず、狭いレンジでの取引に終始した一方、ドル円は157円台から一気に159円台まで円安が進んだ。円買い介入が観測された最終日の8月3日の水準からも、すでに大きく離れており、わずか1週間で介入効果が剥落しつつある。
ここまで円安基調が強い背景には、高市政権が財政健全化への責任を後退させた政策運営、具体的には「骨太の方針」から財政健全化目標を除外したことや、トランプ米大統領との合意に基づく対米投資など、円安を促す政策が根本にある。為替介入だけで円安の流れを反転させることが難しいのは、こうした円安要因が温存されたままだからだ。
市場が警戒しているのは、ゴールデンウイーク中の介入と同様、今回も1シリーズ(3営業日)の介入で手控えられた場合、むしろその反動で円安が加速する可能性である。IMM通貨先物の非商業(投機)部門の円ポジションは、7月28日の16万3412枚の円売りから、介入後には4万5473枚まで減少し、7割以上の円買い戻しが進んだ。ゴールデンウイーク中の介入と比較しても、今回は米国との協調介入だったこともあり、投機筋の円ポジション整理は大きく進んだ。
しかし、これは裏を返せば、介入によって円を買い戻した投資家が再び円を売り直す余地が大きいことを意味する。今回も介入が一過性に終われば、円売りポジションの再構築が進み、介入前以上の円安圧力につながる可能性がある。
さらに今回は、米国が協調しただけでなく、米国からの圧力を背景に9月の日銀利上げも促す形となった。通貨当局としては、異例ともいえる米国との協調介入と日銀の利上げを組み合わせれば、円安の流れを食い止められるとの判断があったのかもしれない。しかし、現状はその期待とは正反対に、介入効果が急速に巻き戻されている。
このまま円安に対して弱いメッセージしか発せられなければ、最悪の場合、市場と通貨当局の攻防が一段と激化する可能性もある。1992年にイングランド銀行が欧州為替相場メカニズム(ERM)防衛に失敗し、ポンドが市場の巨大な売り圧力に飲み込まれたように、当局の政策余地が市場に見透かされれば、為替介入そのものが円売りの格好の機会として利用されるリスクもある。そうなれば、円安を止めるための介入が、逆に市場の円売りを強めるという皮肉な展開にもなり得る。
なお、本日は本邦からマネーストックM2の発表が予定されている程度で、アジア・オセアニアを含め、市場を大きく動意づけるような主要経済指標の発表はない。ただ、米国では7月の消費者物価指数(CPI)が発表されるため、それまでは積極的な取引が手控えられ、ドル円も方向感の乏しい展開となる可能性がある。もっとも、159円台まで円安が進んだことで、東京市場では本邦通貨当局の動向を意識した神経質な値動きが続くだろう。
(松井)