週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、BOE政策会合に注目

◆英政府、財政計画発表を31日から11月17日に延期
◆ポンド、BOEの金融政策会合に注目
◆加ドル、週末の10月加雇用統計に注目

予想レンジ
ポンド円 164.00-172.00円
加ドル円 106.00-110.00円

10月31日週の展望
 金融市場から総じて好意的に評価されてきた、英国のスナク元財務相が新首相に就任。英長期金利の低下やポンドの買い戻しが進むなど英金融市場はいったん落ち着きを戻している。ただ、英国は深刻な景気減速とインフレ高に見舞われているなかで、スナク政権は財政収支の改善に取り組まなければならず、市場と国民から信頼を得る財政計画を示すのは容易ではない。景気の逆風やイングランド銀行(英中銀、BOE)の政策スタンスを足かせに、ポンドは上値の重い動きが見込まれる。来週は、BOEの金融政策会合に注目が集まりそうだ。

 スナク首相は就任演説で「経済の安定と信頼を政府の議題の中心に据える」と述べ、経済課題に最優先で取り組む考えを示した。31日発表予定だった財政計画は11月17日に延期された。スナク首相自らが掲げる政策と財政計画との調整が進んでおり、ハント財務相は「可能な限り正確な経済・財政予測に基づいた財政計画が重要」との認識を示した。財政収支を改善するために、英国民は一段の増税か、インフラ投資の削減や公共サービスの縮小などを受け入れなければならない。生産性低迷という長期的課題と、エネルギー料金高騰に伴う生活費危機という大きな問題に直面しているなか、スナク首相が議会と国民の支持を確保し続けるのは相当難しいだろう。

 来週のBOE政策会合では、0.75%の利上げが見込まれている。0.75%の利上げとなれば、昨年12月から利上げを続けているBOEにとって最大の利上げ幅となる。英政権交代で政府の政策からの圧力は緩んだものの、コアインフレ率の高止まりと労働市場の逼迫継続は、依然として金融政策を大幅に引き締める必要があることを示唆している。インフレ対策の金融引き締めはより著しい景気後退への懸念を高め、大幅利上げが素直にポンド買いの材料にはなりにくい。

 加ドルは、週末の10月雇用統計に注目。今週のカナダ中銀(BOC)の金融政策会合では市場の0.75%利上げ予想に対し0.50%の利上げにとどまり、政策金利を3.75%に決定した。インフレとインフレ期待の高まりを背景に依然として追加利上げが必要との認識を示した一方で、マックレムBOC総裁は「現在の引き締め局面は終了に近づきつつある」との認識を示し、今後の利上げは通常の利上げ幅とされる0.25%にシフトする可能性があると述べた。BOCはリセッション入りの可能性を指摘し、積極的な利上げがもたらす経済への影響や金融安定性への懸念から強気姿勢にややブレーキをかけ始めている。加ドルは、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の対ドルでの動きに注目したい。

10月24日週の回顧
ポンドは、スナク元財務相が英首相に就任したことが好感され、買い戻しが優勢。ポンドドルは1.16ドル半ば、ポンド円は170円前半まで切り返した。加ドルはBOC政策イベント後に一時売られる場面もあったが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが減速するとの見方を背景としたドル売りが続くなか、ドル/加ドルは1.35加ドル前後まで加ドル高が進んだ。加ドル円はドル円に連動し神経質な動きも108円を挟んで上下し、方向感は限られた。(了)
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