東京為替見通し=ドル円、底堅い展開か 米10年債利回り上昇や年末レパトリ観測で

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが3.85%台まで上昇したことなどから133.60円まで上昇。ユーロドルは米長期金利の上昇を受けて1.0612ドルまで下落したものの、欧州金利も上昇しているため下値は限定的だった。ユーロ円は欧州時間の高値142.27円とから141.56円付近まで下押し後に切り返した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米長期金利の上昇や米国企業の期末・年末に向けたレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)、国内勢のドル需要などから底堅い展開が予想される。

 中国のコロナ規制緩和はリスクオンのドル売り要因だが、インフレを煽るとの懸念から米国債利回りが上昇していることでドル買い要因ともなっている。

 8時50分には19-20日・日銀金融政策決定会合の「主な意見」公表される。イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の変動許容幅の拡大を巡る審議委員の見解を見極め、黒田日銀総裁の発言「YCCの上限引き上げは利上げではない」との整合性を見定めることになる。

 日銀金融政策決定会合では、YCC政策における10年国債金利の誘導水準を0%程度に維持しつつ、変動許容幅を従来の上下0.25%程度から上下0.5%程度に拡大することが決定された。黒田日銀総裁は、9月の日銀金融政策決定会合後には、「上限引き上げは利上げに当たる。金融緩和の効果を阻害するので『当面』考えていない。『当面』とは、2-3年を意味する」との見解を示していた。しかし、12月の会合後は「今回のYCCの運用の見直しは、金融緩和を持続的かつ円滑に進める対応で出口の一歩では全くない」と述べている。

 海外の投機筋は、YCC上限0.25%により、円キャリートレードなどで円売りを仕掛けてきたが、「2-3年引き上げない」との黒田日銀総裁発言で150円に到達した頃から手仕舞いつつあった。一方、日本国債は11月末時点で10兆円超のショートポジションが残っていると見られており、マイナス金利やYCCの解除を待つ状況らしい。

 黒田日銀総裁は、YCC上限0.25%により、円下落という収益機会を提供し、上限0.50%により、日本国債下落という収益機会を提供したことになる。

 ところで、12月20日のYCCショックの翌日、21日に米資産運用会社グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が心臓発作で急死した。新債券王とも呼ばれていた
彼は、日銀が国債を買い支えている状況は持続不可能である、と繰り返し述べており、以下の様な持続不能な無限ループを提示していた。
1)日銀は円紙幣を印刷して日本国債を買い、金利目標(※0±0.25%)を維持する
2)日本円の供給量が増えるため、円の価値が下落する(円安)
3)日銀は円を支えるために外貨準備を売り円を買う(※ドル売り・円買い介入)
4)円の供給量が減り円高になることで、日本国債の金利に上昇圧力がかかる
1)に戻る

 今回は、1)に戻ったものの、マイナード氏が警告していたように、金利目標が0±0.50%に拡大された。
 そして、最終的には、金利目標は撤廃され、日本の長期金利が上昇し、日本の債務状況が悪化するため、日本政府は増税を余儀なくされる。そして、日本国債の下落により、日銀が債務超過に陥ることになる。

 マイナード氏は、上限金利設定後のシナリオを提示していた。
1)日銀は新たな金利ターゲット(※今回は0.50%)を設定する
2)日銀の保有する国債の価値が下がる(※債務超過の懸念が高まる)
3)市場は新たな金利上限に挑戦する(※インフレ率の4%程度)
4)日銀は国債買い入れ(指し値オペ)で国債市場の安定化を目論む
5)円の供給量が増えるため、インフレがさらに悪化する


(山下)
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