東京為替見通し=ドル円、米10年債利回り低下で伸び悩む展開か

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、136円台前半での狭いレンジ取引に終始した。ユーロドルは米10年債利回りが3.89%台まで低下し、独10年債利回りが2.593%前後まで上昇したことで、1.0620ドルまで上昇した。ユーロ円144.55円まで上昇した。ポンドドルは1.2066ドルまで上昇。英国と欧州連合(EU)が北アイルランド問題で合意したことを好感した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りが3.9%台で上昇が一服し、日本国債10年物利回りが0.50%付近で高止まりしていることで伸び悩む展開が予想される。

 昨日のドル円は、東京市場で136.55円まで続伸したものの、137.10円台の200日移動平均線(※27日付け137.13円)の手前で足踏みしており、米10年債利回りも4.0%の手前で上昇力が弱まった。ドル円が200日移動平均線を上抜けて140円台に向けた上昇トレンドを回復するには、米10年債利回りの4.0%台乗せなどの援軍が必要なのかもしれない。

 しかしながら、日米の金融政策の乖離観測から、90日移動平均線(※27日付け135.83円)付近では下げ渋る展開となっている。

 フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場は、3月、5月、6月のFOMCで0.25%の利上げが行われ、年末のターミナルレート(利上げの最終到達点)が5.25-5.50%となることが示唆されており、FEDピボット(FRBの利下げ転換)が先送りされている。一方、日銀新体制は現状の金融緩和策が当面維持される可能性、すなわち、BOJピボット(日銀の利上げ転換)が先送りされる可能性が高まっている。

 植田日銀総裁候補による24日の衆議院と27日の参議院での所信聴取・質疑から、植田氏の見解を確認しておきたい。

 まず「情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切である」と述べたことで、4月からの日銀新体制の下でも、当面はマイナス政策金利(▲0.10%)とイールドカーブコントロール(YCC)の許容変動幅±0.5%が続くことが予想される。

 YCCに関しては、良好な金融緩和を持続できるメリットが、市場機能に悪影響というデメリットを上回っているため、12月のYCC運用見直しを見守っている状況とのことである。そして、YCC修正のタイミングは、「2%の持続的・安定的なインフレ率の達成が見通せる時期、あるいはその周辺」と述べ、基調的な物価が上昇しない場合は、副作用を踏まえて持続性の高い仕組みを考えると述べた。

 注目された見解としては、国債買い入れを通じた政策効果を否定したことであり、非伝統的な量的金融緩和政策や伝統的な金融政策の限界を示唆したのではないだろうか。

 また、「学術的には物価の安定とは、物価が動かない状態、つまり0%の物価上昇率である。0%よりもかなり高い水準に物価目標を設定することは問題である」と述べたことで、インフレ目標2%が引き下げられる可能性が示唆されたのかもしれない。

 インフレ目標ゼロ%は、かつてバーナンキ第14代FRB議長も主張しており、二人ともFRB副議長やイスラエル中銀総裁を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏のマサチューセッツ工科大学(MIT)の教え子であることで、フィッシャー説なのかもしれない。サマーズ元米財務長官は、植田氏のことを「日本のバーナンキ」と評した所以なのかもしれない。


(山下)
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