東京為替見通し=ドル円、米10年債利回り低下で伸び悩む展開か

 4日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、予想を上回った11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、12月13-14日のFOMC議事要旨「引き続き、FF金利の継続的な引き上げが適切」などを受けて132.72円まで上昇した。ユーロ円は140.76円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りが低下していることで上値が重い展開が予想される。

 12月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、「引き続きFF金利の継続的な引き上げが適切」との見解が示された。そして、今年のFOMCでの投票権を持つカシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は、FF金利を5.40%まで引き上げる必要があると述べている。
 しかしながら、米10年債利回りは3.6%台に低下し、2月1日のFOMCでの0.25%利上げ確率が70.7%となっている。
 ドル円は、3日に続いて昨日も129円台まで売られた反動で132円台まで上昇しているが、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル/ドルなどはドル売りが優勢となっていることで、ドル円の上値は限定的だと思われる。上値の攻防の分岐点としては、12月30日の高値133.10円に注目しておきたい。

 1月3日放送のラジオ番組で、岸田首相は、政府と日本銀行の共同声明(アコード)について、「アコードを見直すかどうかも含めて新しい日銀総裁と話をしなければならない」と述べた。このラジオ番組の収録は、昨年12月19日に行われたとのことである。
 市場では、キシダノミクスでのアコードは、アベノミクスでの「物価上昇率2%」から、「賃金上昇率3%」になるのではないか、と警戒されている。
 その翌日の12月20日には、日銀金融政策決定会合での「事実上の利上げ」が決定されている。すなわち、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策における10年国債金利の誘導水準を0%程度に維持しつつ、変動許容幅を従来の上下0.25%程度から上下0.5%程度に拡大することが決定された。
 そして、年末の日経報道では、「日銀は17-18日の金融政策決定会合で、物価見通しの上方修正を検討。政府・日銀が目標とする2%に近い水準で物価が高止まりすることになり、緩和修正への圧力がさらに増す可能性がある」と報じられた。

 白川第30代日銀総裁は、安倍首相(当時)との関係が悪化したことで、任期満了の2013年4月8日を待たずに3月19日に早期辞任した。
 黒田第31代日銀総裁も、岸田首相との関係悪化により、任期満了の4月8日を待たずに、3月19日に任期満了となる両副総裁に合わせて早期辞任するのではないか、との噂がある。

 黒田日銀総裁と岸田首相の関係を、報道などで確認できる範囲で整理しておきたい。
・2022年9月20日:黒田日銀総裁「上限引き上げは利上げに当たる。金融緩和の効果を阻害するので『当面』考えていない。『当面』とは、2-3年を意味する」
・22年11月10日:岸田首相が黒田日銀総裁に「余分なことまで会見で言わないように」
・22年12月19日:岸田首相「アコードを見直すかどうか新しい日銀総裁と話をしなければならない」(※1月3日のラジオ収録)
・22年12月20日:黒田日銀総裁「上限引き上げは利上げではない」
・22年12月31日:日経報道「日銀は1月に示すコアCPIの前年度比上昇率の見通しをから上方修正する検討に入った」
・23年1月3日:岸田首相「アコードを見直すかどうか新しい日銀総裁と話をしなければならない」
・23年1月4日:黒田日銀総裁「賃金上昇を伴う形での物価上昇実現のために金融緩和継続」
・23年1月4日:岸田首相「春闘でインフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」


(山下)
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