NY為替見通し=金融危機相場続く、AT1債の影響見通し立たずドル円は売り場探しか

 欧州入り後のドル円は、堅調な欧州株式市場の動きや、債券売りなどに支えられ、リスク回避の動きが弱まり、132円台前半まで強含んでいる。もっとも、ドル円は上値では売り場探しとなるか。

 市場は今日から始まり、明日結果が公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)待ちとの声が強い。しかしながら、先週の欧州中央銀行(ECB)の結果公表後の市場の動きは神経質だったものの、大きなトレンドを作るようなものにはならず、当面は金利相場ではなく金融危機相場になりそうだ。一部では金利面に着目しドル円の下落時には、ドル買いを仕掛けている市場参加者もいるが、金融危機相場は始まったばかりということもあり、本格的にリスク選好の動きに戻るのは相当な時間を要するだろう。

 特に、UBSによるクレディスイス(CS)の救済買収に関しては、損失順序が通常と異なっていることが大きな問題だ。通常は損失責任が一番大きな株式に対して今回は救済措置を与え、逆にAT1債に対しては全損とした。この影響で米大手債券運用会社PIMCOは約3.4億ドルの損失との報道があるが、他の金融機関や投資家の損失がどの程度になるかがまだ不確定だ。また、欧米投資家でクレディスイスのAT1債保有者が訴訟を考えているとの話も流れている。
 更に、今回の損失順序の変更が、今後どの程度金融市場に拡大するかは不透明で、他のAT1債に対しての投資を回避する動きになる可能性もある。これは、日本の投資家にとっても対岸の火事ではなく、AT1債を組み入れた投資信託が日本の個人投資家向けにも販売されていることで、どの程度影響が拡大するかを確かめる必要がある。

 昨日は、欧州中央銀行(ECB)、欧州銀行監督機構、単一破綻処理委員会(SRB)、イングランド銀行(英中銀)などが相次いで今回のスイスの対応は異なり、これまで通り損失を負担するのは株主が先で、債券保有者はその後になることを説明している。しかし、中央銀行の一つが、これまでと違う損失順序としたことで投資家の中では疑心暗鬼が生じている。リスク回避姿勢が継続されれば、ドル円は上値が重くなりそうだ。

 なお、本日のNY時間は米国からは2月中古住宅販売件数が発表される以外は、主だった経済指標の発表は予定されていない。
 

・想定レンジ上限
 ドル円の上値目途は、20日高値132.65円から日足一目均衡表・雲の上限132.70円が抵抗帯。上抜けると日足一目均衡表・転換線133.96円を目指すか。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値目途は、20日安値130.54円から日足一目均衡表・雲の下限130.49円が支持帯。

(松井)
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