NY為替見通し=北米市場休場で薄商い、トランプ氏思惑崩れ原油が高止まりがドルの支え
本日のNY為替市場では、米国がコロンブスデーに伴い債券市場が休場となるほか、カナダも感謝祭で休場となるため、積極的な取引は手控えられ、大きな値動きは期待しにくい。ただ、裏を返せば、それだけ市場の流動性が低下するということでもある。薄商いの中では、突発的な材料をきっかけに値動きが増幅される可能性があり、相場の急変には警戒が必要だ。なお、米国の株式市場は通常通り取引されるため、株式市場の動向が為替を動かす可能性は残る。
ドル円を支える要因としては、混迷を深める中東情勢が挙げられる。先週末は、トランプ米大統領が中間選挙までのイラン攻撃停止に加え、ロシアからの軽油供給について合意したと発表したことで、原油先物価格が時間外取引で下落する場面があった。米国内のガソリン価格が高止まりする中、イランへの軍事行動を抑制する動きは、エネルギー価格の上昇を抑えたいトランプ政権の思惑とも重なる。ただ、ロシアとの合意についても、実際の供給量や実現性が不透明なままでは、発表だけを材料に市場が楽観に傾くとは考えにくい。両国首脳の発表を額面通りに受け止めることはできず、具体的な履行状況を見極める必要がある。
その一方で、中東の戦禍は拡大している。10日には、サウジアラビアの首都リヤドにあるキング・ハーリド国際空港が攻撃を受け、少なくとも12人が死亡、309人が負傷した。イランの支援を受けるフーシ派が攻撃を実行したとされ、トランプ大統領も米国がサウジアラビアの軍事作戦に加わる可能性を示唆している。紛争が周辺国へと拡大すれば、エネルギー供給網への懸念が一段と強まり、原油価格の押し上げ要因となる。
一時89ドル台まで下落していた時間外のWTI原油先物価格は91ドル台を回復した。ロシア産軽油の供給拡大や軍事行動の抑制が原油価格の下押し材料となる一方、中東情勢の緊迫化が下値を支える構図だ。トランプ大統領の思惑通りに原油価格が低下せず、エネルギー高を通じたインフレ圧力が残れば、米長期金利も高止まりしやすくなる。米金利の上昇がドル買いを促す展開は、引き続きドル円の支援材料となるだろう。
一方、ドル円の上値を抑える要因としては、高市政権の政策姿勢を巡る変化が挙げられる。高市首相は積極財政を掲げ、日銀の審議委員にもリフレ派とされる浅田委員と佐藤委員を起用した。しかし、予算案を巡る質疑応答などでは、政権側がリフレ政策に距離を置く姿勢を示している。ベッセント米財務長官をはじめとする米政権が日本の金融政策や円安に懸念を示す中、高市首相が従来の主張から軌道修正しているとの見方も出ている。
もっとも、発言を修正しただけで政策の実態が変わるわけではない。積極財政を掲げながらリフレ政策を否定するのであれば、今後の予算編成や日銀の金融政策運営との整合性が問われることになる。米政権からの圧力を受けて政策姿勢を転換したとの見方が広がれば、円安が進んだ局面で高市政権が為替動向にこれまで以上に敏感に反応する可能性もある。
さらに、欧州の政治・財政リスクも無視できない。フランスでは財政赤字の削減が課題となり、スペインでも政治情勢の不透明感が続いている。ドイツでは12日、社会民主党(SPD)の共同党首で労働相を務めるベアベル・バス氏が、継娘の死去を受けて党首と閣僚の職を辞任すると発表した。辞任の背景には個人的な事情に加え、連立相手からの批判もあったとされ、メルツ政権の連立運営にも新たな不確実性が生じている。
欧州の政治・財政不安はユーロの重荷となり得る一方、地政学リスクの高まりや主要国の政策運営への不信感は、為替市場全体の不安定要因となる。ただし、こうした環境が必ずしも円買いに直結するわけではない。円が避難通貨として選好されるかどうかは、リスク回避の強さに加え、米金利や日本の政策運営、各通貨の需給にも左右される。
総じて、原油高と米金利の高止まりはドル円を支える一方、高市政権の政策姿勢を巡る不透明感や円安への警戒は、上値を抑える要因となる。米国とカナダの休場で流動性が低下する本日は、方向感の乏しい展開が続く可能性があるものの、中東情勢や米金利を巡る新たな材料が出れば、薄商いの中で値動きが一気に拡大するリスクも意識しておきたい。
・想定レンジ上限
ドル円の上値めどは、日足一目均衡表・雲の上限159.03円。
・想定レンジ下限
ドル円の下値めどは、日足一目均衡表・転換線157.45円。
(松井)
ドル円を支える要因としては、混迷を深める中東情勢が挙げられる。先週末は、トランプ米大統領が中間選挙までのイラン攻撃停止に加え、ロシアからの軽油供給について合意したと発表したことで、原油先物価格が時間外取引で下落する場面があった。米国内のガソリン価格が高止まりする中、イランへの軍事行動を抑制する動きは、エネルギー価格の上昇を抑えたいトランプ政権の思惑とも重なる。ただ、ロシアとの合意についても、実際の供給量や実現性が不透明なままでは、発表だけを材料に市場が楽観に傾くとは考えにくい。両国首脳の発表を額面通りに受け止めることはできず、具体的な履行状況を見極める必要がある。
その一方で、中東の戦禍は拡大している。10日には、サウジアラビアの首都リヤドにあるキング・ハーリド国際空港が攻撃を受け、少なくとも12人が死亡、309人が負傷した。イランの支援を受けるフーシ派が攻撃を実行したとされ、トランプ大統領も米国がサウジアラビアの軍事作戦に加わる可能性を示唆している。紛争が周辺国へと拡大すれば、エネルギー供給網への懸念が一段と強まり、原油価格の押し上げ要因となる。
一時89ドル台まで下落していた時間外のWTI原油先物価格は91ドル台を回復した。ロシア産軽油の供給拡大や軍事行動の抑制が原油価格の下押し材料となる一方、中東情勢の緊迫化が下値を支える構図だ。トランプ大統領の思惑通りに原油価格が低下せず、エネルギー高を通じたインフレ圧力が残れば、米長期金利も高止まりしやすくなる。米金利の上昇がドル買いを促す展開は、引き続きドル円の支援材料となるだろう。
一方、ドル円の上値を抑える要因としては、高市政権の政策姿勢を巡る変化が挙げられる。高市首相は積極財政を掲げ、日銀の審議委員にもリフレ派とされる浅田委員と佐藤委員を起用した。しかし、予算案を巡る質疑応答などでは、政権側がリフレ政策に距離を置く姿勢を示している。ベッセント米財務長官をはじめとする米政権が日本の金融政策や円安に懸念を示す中、高市首相が従来の主張から軌道修正しているとの見方も出ている。
もっとも、発言を修正しただけで政策の実態が変わるわけではない。積極財政を掲げながらリフレ政策を否定するのであれば、今後の予算編成や日銀の金融政策運営との整合性が問われることになる。米政権からの圧力を受けて政策姿勢を転換したとの見方が広がれば、円安が進んだ局面で高市政権が為替動向にこれまで以上に敏感に反応する可能性もある。
さらに、欧州の政治・財政リスクも無視できない。フランスでは財政赤字の削減が課題となり、スペインでも政治情勢の不透明感が続いている。ドイツでは12日、社会民主党(SPD)の共同党首で労働相を務めるベアベル・バス氏が、継娘の死去を受けて党首と閣僚の職を辞任すると発表した。辞任の背景には個人的な事情に加え、連立相手からの批判もあったとされ、メルツ政権の連立運営にも新たな不確実性が生じている。
欧州の政治・財政不安はユーロの重荷となり得る一方、地政学リスクの高まりや主要国の政策運営への不信感は、為替市場全体の不安定要因となる。ただし、こうした環境が必ずしも円買いに直結するわけではない。円が避難通貨として選好されるかどうかは、リスク回避の強さに加え、米金利や日本の政策運営、各通貨の需給にも左右される。
総じて、原油高と米金利の高止まりはドル円を支える一方、高市政権の政策姿勢を巡る不透明感や円安への警戒は、上値を抑える要因となる。米国とカナダの休場で流動性が低下する本日は、方向感の乏しい展開が続く可能性があるものの、中東情勢や米金利を巡る新たな材料が出れば、薄商いの中で値動きが一気に拡大するリスクも意識しておきたい。
・想定レンジ上限
ドル円の上値めどは、日足一目均衡表・雲の上限159.03円。
・想定レンジ下限
ドル円の下値めどは、日足一目均衡表・転換線157.45円。
(松井)
