東京為替見通し=ドル高是正時期尚早もG7控え上値が重いか、米格下げの影響も注視

 先週末の海外市場でドル円は、5月米ミシガン大学消費者態度指数速報値の期待インフレ率が予想を上回ったことから全般ドル買いが先行し、146.10円まで上値を伸ばした。ただ、円安是正議論への思惑が広がる中、米格付け会社ムーディーズが米国の信用格付けを引き下げたことも相場の重しになり上値が抑えられた。ユーロドルは、一時1.1131ドルまで弱含んだ後は下げ渋った。

 本日の東京時間でドル円は、引き続き上値が重い展開になると予想される。先週は、ドル高・円安是正議論への思惑が高まると、ドル円の上値が重くなった。その後、「米政府は貿易交渉の一部としてドル安を模索してはいない」との一部報道が伝わると、ドルを買い戻すが動きがあったものの値動きは限定的だった。更に16日には、台湾政府高官が「米国との貿易協議には、為替は含まれていない」と発言、鄭仁教・韓国通商交渉本部長も「グリア米通商代表部(USTR)代表との協議で為替は取り上げられなかった」と述べた。日本とともにドル高・自国通貨安是正が考えられる台湾・韓国両国が、為替協議を否定したのにもかかわらず、ドル円は買いで反応することもほぼなく、上値の重いセンチメントが示されている。

 今週市場が注目するのは、20-22日にカナダのバンフで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議。加藤財務相が「ベッセント米財務長官と来週のG7会合の場で為替協議を検討」と発言したことで、より注目度が増している。ただ、仮にドル高是正などについて話し合いが持たれた場合でも、日米両財務相が公式にドル高是正を発表するのは時期尚早か。

 先週に韓国企画財政部の報道官が「米韓通商交渉で為替について協議した」とも発言したが、前述のように韓国通商交渉本部長はUSTR代表との為替についての協議は否定した。基軸通貨としてのドルの権威が失墜しないように、ドル高是正が行われる場合も慎重に期す必要がある。ドル高是正を公表する場合は、日米両国間だけでの発表ではなく、他国とも歩調を合わせて発表される可能性が高そうだ。なお、本日から日経新聞ではプラザ合意40年の特集記事がはじまっている。同紙の特集がドル高是正への地ならしという側面があるとの憶測もあり、今週のG7財務相・中央銀行総裁会議だけでなく、6月15-17日にカナダ・カナナスキスで予定されているG7サミットへ向けて、ドル高是正への思惑は拭えないだろう。

 他の注目点としては、先週末のNY引けを前に米格付け会社ムーディーズが米国の信用格付けを「AAA」から「AA1」に引き下げたことの影響を見定める必要がある。格付け会社の発表は、これまでも金曜日のNY引け間際ということもあり、発表された時間はサプライズではなかった。ただ、週末を前に流動性が枯渇していることで、パニック的な動きにならないように、敢えて反応を控えた債券市場参加者もいることが予想される。為替市場は早朝のオセアニア市場で小幅にドル安が進んだが、本日の時間外相場で米債を売ることになるのかを確認する必要がありそうだ。

 円以外では、ユーロの値動きにも注目。週末に行われた東欧ルーマニアでの、やり直しとなった大統領選の決選投票では、親EU、親北大西洋条約機構(NATO)路線のダン候補の当選が確実になりつつある。第1回投票では1位だった野党の極右政党、ルーマニア人統一同盟のシミオン党首が敗北を認めれば、欧州圏の安定につながることでユーロの支えになりそうだ。


(松井)
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