東京為替見通し=円安継続、ポンド・スイスフラン以来となる介入の「白旗」に警戒
昨日は7月米卸売物価指数(PPI)が予想より弱い内容となったことやWTI原油先物相場の下落を受けて、一時159.02円まで弱含んだ。ただ、ファンダメンタルズ面では依然として円売り圧力が強いことも意識されて、159.57円と7月31日以来の高値を更新した。ユーロドルはほぼ横ばいで動いた。
本日の東京市場のドル円も、引き続き本邦為替当局による円買い介入が警戒される。ただ、介入がなければ、円安トレンドは継続する可能性が高いだろう。
これまで幾度となく為替介入が行われてきたが、今回ほど介入による円高効果が短期間で剥落し、繰り返し円安に押し戻されるケースは稀だ。市場では、条件こそ異なるものの、1992年のポンド危機や2015年のスイスフランショック以来となる、政策当局が市場の大きな流れに抗しきれなくなる事態を懸念する声も出てきている。
ポンド危機では、高失業率などを背景に市場がポンドを実勢価値より割高と判断し、ポンド売り圧力が強まった。英国政府とイングランド銀行は金利引き上げや為替介入によってポンドを支えようとしたものの、市場の圧力に抗しきれず、最終的に英国はERM(欧州為替相場メカニズム)から離脱することになった。
一方、スイスフランショックでは、ECBによる量的緩和観測が強まる中でユーロ売り・スイスフラン買いが強まり、スイス国立銀行(SNB)はEUR/CHFの1.20フランという下限を維持するため、大規模な為替介入を続けていた。しかし、介入規模が急速に拡大し、下限の維持が困難になったことで、2015年1月に突然その下限を撤廃した。SNB自身も、急速に規模が拡大する介入による下限維持は持続不可能になったと説明している。
両者は背景こそ異なるものの、共通しているのは、政策当局が市場の圧力に対して政策目標を維持できなくなった点にある。
今回の円売りも状況は異なるが、足元の円安にはファンダメンタルズに沿った側面がある。高市政権が財政健全化への責任を後退させる政策運営を続け、「骨太の方針」から財政健全化目標を除外したことや、トランプ米大統領との合意に基づく対米投資、さらにリフレ派の日銀金融政策実行委員の指名など、円売りを促しやすい政策が続いているためだ。
その円安に対して、日米の協調介入、FIMAレポ・ファシリティの利用、そして日銀による利上げ方針の明確化など、政府・日銀はこれまで以上に多くのカードを切っている。それでも円安に歯止めがかからず、さらに巨額の介入資金を投入しても効果が限定的となれば、市場の焦点は「164円を超えるか」だけではなく、その先のさらなる円安をどこまで許容できるのかに移ることになる。
政府・日銀が市場に対して「ここから先は円安を許容しない」と示すだけでは、円安を止めることが難しくなる可能性がある。重要なのは介入の規模そのものではなく、市場に政策当局の円安阻止能力を信じさせられるかどうかだ。政策目標を維持するためのコストが際限なく膨らむようになれば、2015年のSNBのように、最終的に政策そのものの持続可能性が問われる局面に入る可能性にも留意したい。
なお、米国とイランの情勢を巡っては、原油先物価格の上下に伴って為替市場が動意づく場面もある。ただ、ここ最近の市場関係者は、トランプ政権が続く限り恒久的な和平が実現することは難しいとの見方も強く、原油価格についても高止まりした水準での上下動と捉えている向きが多い。原油相場を無視することはできないものの、為替市場の反応は徐々に鈍くなっている。
(松井)
本日の東京市場のドル円も、引き続き本邦為替当局による円買い介入が警戒される。ただ、介入がなければ、円安トレンドは継続する可能性が高いだろう。
これまで幾度となく為替介入が行われてきたが、今回ほど介入による円高効果が短期間で剥落し、繰り返し円安に押し戻されるケースは稀だ。市場では、条件こそ異なるものの、1992年のポンド危機や2015年のスイスフランショック以来となる、政策当局が市場の大きな流れに抗しきれなくなる事態を懸念する声も出てきている。
ポンド危機では、高失業率などを背景に市場がポンドを実勢価値より割高と判断し、ポンド売り圧力が強まった。英国政府とイングランド銀行は金利引き上げや為替介入によってポンドを支えようとしたものの、市場の圧力に抗しきれず、最終的に英国はERM(欧州為替相場メカニズム)から離脱することになった。
一方、スイスフランショックでは、ECBによる量的緩和観測が強まる中でユーロ売り・スイスフラン買いが強まり、スイス国立銀行(SNB)はEUR/CHFの1.20フランという下限を維持するため、大規模な為替介入を続けていた。しかし、介入規模が急速に拡大し、下限の維持が困難になったことで、2015年1月に突然その下限を撤廃した。SNB自身も、急速に規模が拡大する介入による下限維持は持続不可能になったと説明している。
両者は背景こそ異なるものの、共通しているのは、政策当局が市場の圧力に対して政策目標を維持できなくなった点にある。
今回の円売りも状況は異なるが、足元の円安にはファンダメンタルズに沿った側面がある。高市政権が財政健全化への責任を後退させる政策運営を続け、「骨太の方針」から財政健全化目標を除外したことや、トランプ米大統領との合意に基づく対米投資、さらにリフレ派の日銀金融政策実行委員の指名など、円売りを促しやすい政策が続いているためだ。
その円安に対して、日米の協調介入、FIMAレポ・ファシリティの利用、そして日銀による利上げ方針の明確化など、政府・日銀はこれまで以上に多くのカードを切っている。それでも円安に歯止めがかからず、さらに巨額の介入資金を投入しても効果が限定的となれば、市場の焦点は「164円を超えるか」だけではなく、その先のさらなる円安をどこまで許容できるのかに移ることになる。
政府・日銀が市場に対して「ここから先は円安を許容しない」と示すだけでは、円安を止めることが難しくなる可能性がある。重要なのは介入の規模そのものではなく、市場に政策当局の円安阻止能力を信じさせられるかどうかだ。政策目標を維持するためのコストが際限なく膨らむようになれば、2015年のSNBのように、最終的に政策そのものの持続可能性が問われる局面に入る可能性にも留意したい。
なお、米国とイランの情勢を巡っては、原油先物価格の上下に伴って為替市場が動意づく場面もある。ただ、ここ最近の市場関係者は、トランプ政権が続く限り恒久的な和平が実現することは難しいとの見方も強く、原油価格についても高止まりした水準での上下動と捉えている向きが多い。原油相場を無視することはできないものの、為替市場の反応は徐々に鈍くなっている。
(松井)