東京為替見通し=米債売り再燃に警戒、財政健全化策が試金石でドル安・円安地合い継続か

 先週末の海外市場でドル円は日本時間夕刻に一時158.36円と日通し安値を付けたものの、その後は買い戻しが優勢に。米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.74%台まで上昇したこともドル買いを促し、159.05円付近まで持ち直した。ユーロドルはほぼ横ばいで動いた。

 本日の東京市場のドル円は、時間外の米長期債の動向に左右される相場展開となりそうだ。今週は、ベッセント米財務長官が「財政健全化策」を発表すると述べているほか、27日から開かれる米カンザスシティー連銀主催のシンポジウム(通称:ジャクソンホール会議)では、28日にウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長の講演が予定されている。米国の財政・金融政策を巡って米債の振幅が大きくなれば、為替市場も動意づくことになるだろう。また、週末21日には米加貿易協議が決裂したことで、カナダドルの動きにも警戒したい。

 先週19日、米財務省は償還までの期間が10年以上となる国債の買い入れ消却(バイバック)の規模を少なくとも2倍に拡充すると発表した。しかし、債券買い戻しの流れは1日しか持たず、その後は失速し、長期債利回りは上昇している。ベッセント米財務長官は、バイバックに続く「財政健全化策」を今週中に発表する予定だが、米債売りの流れに歯止めをかけられる内容となるかが注目される。

 「財政健全化策」は、ベッセント氏が着任以来掲げている3-3-3戦略、すなわち「財政赤字の削減(GDP比3%目標)」「実質GDP成長率3%の達成」「日量300万バレルの追加増産」が軸になるとみられている。ただ、市場はより具体的な戦略を期待している。一部では、ヴォート行政管理予算局(OMB)局長らと連携し、不要不急の連邦予算の削減や不正支出対策(Fraud Task Force)など、具体的な計画が示されるとの見方もある。バイバックにとどまらず、制度面や歳出面から「米国は本気で財政赤字を抑制する」という強いシグナルを市場に送ることができるかが焦点となる。

 しかし、バイバック発表翌日には長期債利回りが発表前の水準を上回り、超長期債利回りも発表前の水準まで戻している。こうした動きを踏まえると、「財政健全化策」も実効性に欠け、一時的な買い支えに過ぎないと市場が認識した場合、米債市場のクラッシュにつながる可能性もある。特にトランプ米大統領が進める大型減税策や、イランを巡る戦費拡大もあり、どれだけ具体的かつ実現可能性の高い歳出削減策が示されるかが焦点となるだろう。

 仮に「財政健全化策」が好感され、米債が買い戻された場合は、米金利の低下を通じてドル売りが進むことになる。一方、米債が売られた場合でも、短期的には米金利の上昇を受けてドル買いに動きやすいだろう。ただ、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のように米国への信頼性が低下すれば、トリプル安への懸念が強まり、米金利が上昇してもドルが売られる可能性がある。したがって、米金利が上昇しても低下してもドルを積極的に買い進めにくく、ドルの上値を抑える構図となりそうだ。

 一方、米国の戦費拡大が確実視されるなか、トランプ政権が在日米軍の負担を日本にさらに求めるなど、米国の財政負担を日本に肩代わりさせる可能性もある。すでに市場が高市政権の財政政策に対して拒絶反応を示しているなか、本邦の財政悪化がさらに進むリスクもあるため、円を買うのも難しく、ドル売り・円売り地合いが継続する可能性もあるだろう。

 円以外では、カナダドルの動きにも警戒したい。21日に行われた米加間の通商協議は物別れに終わり、貿易協定の締結には至らなかった。すでに早朝からカナダドルは弱含んでいる。米国は22日から一部のカナダ製品に50%の関税を課し、カナダのカーニー首相も9月8日から関税を課すことで「同額の」報復措置を取ると述べている。トランプ米大統領は、当初の期限だった水曜日が迫るわずか数時間前に、合意が間もなく成立すると述べて期限を延期していた。また、カナダのルブラン駐米貿易相も木曜日、記者団に対して合意は「非常に近い」と語っていた経緯があるだけに、今回の決裂を受けてカナダドルに反動的な売りが強まる可能性もありそうだ。


(松井)
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