東京為替見通し=アジア市場は様子見、ジャクソンホールのウォーシュ発言が米国売りを左右

 昨日の海外市場でドル円は、NY勢参入後に全般ドル売りが先行すると一時159.24円付近まで下押ししたものの、積極的に下値を試す展開にはならなかった。3時過ぎには159.46円付近まで持ち直した。ユーロドルはほぼ横ばいで推移した。

 本日の東京為替市場は、日本時間23時頃に米カンザスシティー連銀主催のシンポジウム(通称:ジャクソンホール会議)でウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長が講演を行うことから、それまでは様子見姿勢が強まりやすいだろう。経済指標では、東京都区部の8月消費者物価指数(CPI)が発表される。

 ジャクソンホール会議でのFRB議長の講演は、これまでも市場の注目を集めてきたが、今回はこれまで以上に注目度が高い。背景には、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でウォーシュ議長が、FOMC後に公表する政策声明文を大幅に短縮し、必要最低限の事実関係のみを記述するスタイルへ変更したことに加え、情報発信(コミュニケーション)に関するタスクフォースを立ち上げ、FRBが市場を誘導しすぎている現状を批判的に再検討させていることがある。

 こうした姿勢から、ウォーシュ氏は市場から「ゼロコミュニケーション」と批判され、市場との対話不足が強く指摘されている。本日の講演で市場が期待しているのは、米債売りを抑えるためにも、FRBがどのような条件で金利を調整するのかを明確に示すことだろう。しかし、7月のFOMC後の会見と同様に市場との対話を重視しない姿勢を続ければ、長期・超長期債を中心に米債売りが一段と加速する可能性が高い。その場合、為替市場は当初、米金利上昇を受けてドル買いで反応する可能性があるものの、FOMC後と同様に「米国売り」が広がり、米債・米株・ドルがそろって売られるトリプル安へ発展するリスクにも警戒しておきたい。

 また、ウォーシュ氏の講演前後には、ベッセント米財務長官が財政健全化に向けた政策を発表する可能性もある。ベッセント氏は先週20日のインタビューなどで、「財政健全化(Fiscal Consolidation)に焦点を当てたイニシアチブを今週末から来週初め(8月下旬)にかけて発表する」と述べていたが、すでに週後半に入っても発表は行われていない。

 ベッセント氏が師事するドラッケンミラー氏は、先週財務省が発表したバイバックについて、国債の満期構成を組み替える技術的なツール、すなわち資金調達期間を変更する手法に過ぎず、発行される純債務の総量を減らすものではないと批判している。ドラッケンミラー氏は、長期金利を持続的に低下させる唯一の方法は「財政赤字の削減(プライマリーバランスの改善)」だと明言している。ベッセント氏がバイバックのような小手先の対応ではなく、抜本的な赤字削減策を示せなければ、米国の財政不安が再燃し、さらなる米債売りにつながるリスクがある。

 アジア時間では、8月の東京都区部CPIが発表される。これまでは全国CPIの前哨戦として注目されてきたが、すでに市場では9月と来年年明けの利上げ予想が濃厚となっていることで反応は限られそうだ。また、通常であればインフレ率の増減が金融政策や為替市場を動かす材料となるが、日銀は政府意向を強く反映する傾向があり、過去にもインフレ局面で据え置きを選択してきた。そのため、指標が極端に振れない限り、物価データが政策金利に及ぼす影響は限定的といえる。

 むしろ現在は、政策金利が政府の意向に左右され、さらにその政府が米国政権からの圧力を受けて政策運営を行っているとの見方が市場で強まりつつある。そのため、東京CPIが多少上下した程度では、ドル円の反応は限られるだろう。市場の視線は国内の物価指標ではなく、最終的には米国側からどのような圧力と政策メッセージが発せられるのかに向いている。


(松井)
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